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英雄伝説〜西風の絶剣〜
第82話 迷子の子供
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 リベールの空の上、そこに巨大な赤い飛行戦艦が静かにたたずんでいた。その戦艦のデッキにレオンハルトが立っており静かに空を見ている。


「戻ったぜ」


 するとそこにヴァルターが現れてレオンハルトに声をかけた。彼は振り返ることもなくヴァルターと話をする。


「痩せ狼、実験の方はどうなった?」
「ノルマは達成したぜ、地震が発生したデータもゴスペル内に記録してある。後は教授に任せるさ」
「そうか。しかし油断したな、負傷するとは情けない」


 レオンハルトはヴァルターを見ていないが彼が腕に怪我を負った事を知っておりそれを指摘する。


「まあ多少は手加減したが正直こんな傷を受けるつもりはなかった」
「それを油断と言うんだ」
「はっ、お前だって一撃貰っただろうが」
「あれはまぐれだ」
「なら俺だって同じだろう」


 レオンハルトの皮肉をヴァルターは好戦的な笑みを浮かべて言い返した。


「まあいい、俺がお前に言いたいのはこんなくだらねえ言い合いじゃねえからな」
「なら何をしに来た」
「剣帝、あのガキに手を出すな。あいつは俺の獲物だ」
「なにかと思えばそんなことか。好きにしろ、あんな奴に興味など無い」
「駄目よ、痩せ狼さん。あいつはレンのターゲットなんだから」


 話を続ける二人の前にレンとワイスマンが姿を現した。


「ヴァルター、彼と交戦したようだね。私は特異点に引き込めと命じたはずだが……」
「あー、そうだったか?」
「まあいいさ、結果的に彼を消耗させてくれた。だが殺そうとしたのはいただけないな、死んだらそれまでとは言ったが意識して殺そうとするのは止めてほしいものだ」
「はっ、あんたに俺の流儀を口出しされる筋合いはねえな」


 ワイスマンの言葉にヴァルターは悪びれる様子もなくそう言い放った。


 本来組織の最高幹部にこのような口をきくのはあり得ないが、結社という組織は変わっていた。執行者はある程度自身の意思で活動することを許されているのだ。


 なのでこの場にいるレオンハルトもレンもワイスマンに忠誠を誓っている訳ではない。それぞれが持つ考えや目的、それらによってこの作戦に参加しているのだ。


「ねえ教授、そろそろレンも動いていいでしょう?他のメンバーはお仕事を貰っているのに私だけ待機だなんてつまらないわ」
「ふむ、なら王都に向かうと良い。そろそろ例の奴らが動き始めるようだ、彼らを利用して君の好きなストーリーを作るといいだろう」
「まあ素敵、なら最高のお茶会にしたいわね」


 レンはそう言ってある写真を懐から出した。そこにはリィンが写っていた。


「貴方とももうじき会えそうね、リィン・クラウゼル……
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