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十回目で
第五章

[8]前話
「それはです」
「礼儀です」
「礼儀は人に対しても守らねばならず」
「神に対しては尚更です」
「だからです」
「どうかアテナ様にお礼をさせて下さい」
 二人で女神にどうしてもと話してだった。
 そのうえで女神に捧げた、それはというと。
 アーモンドの実だった、幾つもの籠に満ちたそれを捧げた。ピュリスはその実達を差し出してから女神に話した。
「アーモンドの花で知らせてもらったので」
「その花からですか」
「はい、実のった実達をです」
 それをというのだ。
「捧げたいのですか」
「そうですか、私がですか」
「そうです、花で知らせてくれたので」
 それ故にというのだ。
「その花から実った実をです」
「捧げてくれますか」
「これで如何でしょうか」
「成程、感謝の後の実りをですか」
 アテナはその実達を見つつピュリスに応えた。
「私にですね」
「感謝として捧げたいのですが」
「お礼はいいと言いましたが」
 それでもとだ、アテナはピュリスに微笑んで応えた。
「こうしたものなら」
「それならですか」
「はい、私の知らせの後の恵みを捧げてくれるとは」
 それならと言うのだった。
「面白いことです、では」
「それではですね」
「受け取らせて頂きます」
「そうしてくれますか」
「お礼を必ずと言う律義さにも感じ入りましたし」 
 それでと言うのだった。
「私も食しオリンポスの神々それに従者達と共にです」
「召し上がられますか」
「そうします、ではこれからは」
 女神は二人をあらためて見て告げた。
「幸せに」
「そうなります」
「ようやく一緒になれたのですから」
「長い間分かれていても想いがそのままなら」
 二人にこうも話した。
「その想いは適います、それを忘れないで下さい」
「わかりました」
「私達は忘れません」
 二人で女神に誓った、そして二人は式をあげてだった。
 末永く共に暮らした、その間二人は国を無事に治めつつアテナがくれたアーモンドの木を大事にしてだった。
 そのうえで女神に花から実った実を捧げた、このことからアーモンドはアテナの木と花それに実の一つと言われる様になった。ギリシアの古い話の一つである。


十回目で   完


                  2022・11・13
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