第一章
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十回目で
トラキアの王女ピュリスはアテナイの王子アカマスと出会った、ピュリスは栗色の波立つ豊かな髪の毛と白い雪の様な肌に顎の先が尖った顔と緑の木の葉の様な色の目を持つ少女だった。白い服からも見事な肢体がわかる。
アカマスは太い眉と強い光を放つ黒い目を持ち黒髪は短く鳥の巣の様になっていて長方形の顔で顎の先は割れていて長身で逞しい身体をしている。
二人は愛し合っていた、だが。
「行くの」
「うん、行くよ」
アカマスはピュリスに悲しそうな顔で答えた。
「私もアテナイの者でね」
「ヘレネスだから」
「ヘレネスなら」
即ちギリシアの者ならというのだ。
「この度はだよ」
「スパルタ王が言われる戦いになのね」
「行くしかないよ」
こう言うのだった。
「これはただスパルタとトロイアの戦いじゃないんだ」
「ギリシアの誇りを賭けた」
「そうした戦いだから」
それ故にというのだ。
「私もだよ」
「行くしかないのね」
「行ってそして」
そのうえでというのだ。
「必ずだよ、勝ってね」
「帰ってきてくれるのね」
「帰ってきたら」
アカマスはピュリスに強い声で答えた。
「その時はだよ」
「一緒になるのね」
「そう、結婚しよう」
こう言うのだった。
「ご両親もそうお話されているし」
「それぞれの」
「それならだよ」
戦いが終わればというのだ。
「私は必ず帰って来るから」
「私は待っていればいいのね」
「そうしてくれるかな」
「ええ」
ピュリスは強い声で答えた。
「わかったわ」
「それではね」
「行って来るのね」
「そうしてくるよ」
こう言ってだった。
アカマスは戦場に赴いた、そうしてだった。
長い歳月が経った、その間。
ピュリスは待っていた、ひたすら。
「私は約束したから」
「だからですか」
「アカマス様を待たれますか」
「そうされますか」
「ええ」
周りにも答えた。
「一日がとても長く感じるけれど」
「待つ間はそうですね」
「どうしてもそう感じます」
「誰でも」
「その間は」
「それでも待つわ」
こう言ってだった。
彼女は待ち続けた、それを見てだった。
ギリシア側に味方する女神アテナは彼女を見てだった。
ある日その前に姿を現し優しい声で告げた。
「貴女の愛しい人が私が護りましょう」
「そうしてくれるのですか」
「はい、ヘレネス達全てであり」
そしてというのだ。
「運命から逃れられぬ者以外はです」
「護ってくれるのですね」
「貴女の想い人は運命の中にありません」
「トロイアとの戦いでは死なないのですね」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「私は待てばいい
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