第一章
[2]次話
胡桃の殻
リトアニアの話である。
神は洪水を起こした、だがこの時神は天界で天使達に話した。
「洪水は起こしたが心正しい者達は救う」
「そうしてですね」
「洪水が起こった後の世界で生きさせるのですね」
「そうさせるのですね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そうさせる」
「しかし神よ」
天使長の一人であるガブリエルが言ってきた。天使達の中で最も女性を思わせる顔立ちであり雰囲気も穏やかである。
「救われると言われましても」
「洪水ではだな」
「空を飛べたり水の中を泳げるのならいいですが」
「それでもだな」
「はい、鳥や魚等なら兎も角」
「わかっておる、そなた達今からこれを食べるがいい」
こう言ってだ、神は天使達の前に皿を出した。その皿の上には胡桃が山の様に盛られていた。神はその胡桃達を指差して命じた。
「そしてその殻を洪水が起こっている世界に放り投げるのだ」
「胡桃を食べてですか」
「そうしてですか」
「その殻をですか」
「世界に投げるのですか」
「そうするのだ、胡桃は幾らでもある」
神は天使達に笑って話した。
「だからな」
「これを食べ」
「そして殻を投げる」
「世界に」
「そうすればいいのですね」
「そうだ、よいな」
こう言ってだった。
天使達に胡桃を食べさせその殻中のみが食べられ天使達によって二つに割られたそれを洪水が起こっている世界に投げさせた、すると殻達は洪水の上に落ちるとだった。
見る見るうちに大きくなりしかも二つに割れて奇麗に洪水の上に浮かんでいた。その殻の上にだった。
洪水の中にいた心正しい者達人だけでなくあらゆる生きもの達がだった。
殻の中に入りそれを船として洪水の上に浮かんだ、殻達は揺れはしたが水は見事にその中に入らずだった。
洪水が収まるまで難を避けることが出来た、それでだった。
心正しき生きもの達は皆生き延びることが出来た、見れば鳥や魚達も洪水が起こった時の雨や荒れ狂う水流でだった。
心正しくない者達は去っていた、そうしてだった。
世界は心正しき者達だけが残った、それで神は満足して言った。
「これでいい、正しき者達を救うのはな」
「胡桃ですか」
「その殻ですか」
「そうなのですか」
「そうだ、胡桃の殻は水が入らずよく浮かぶ」
そうしたものだというのだ。
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