第五章
[8]前話
「いいな」
「そうですね、確かに今この街は厳しいです」
暮らすにはとだ、前田は言った。
「物価が高くなり過ぎて」
「ああ、しかしな」
「それでもですね」
「そんな中でもな」
「こうしたですね」
「安いお店もな」
橋本は前田に応えた。
「あるな」
「ですね、そう思うとまだ捨てたものじゃないです」
「どんな辛い中でもだよな」
バーテンダーがここでまた言った。
「希望はある」
「はい、そうですね」
「そう言われていますね」
二人でバーテンダーに応えた。
「確かに」
「ギリシア神話でしたね」
「パンドラの箱だったな、それが道楽でもな」
所謂金持ちのというのだ。
「あってもいいだろ」
「そうですね、じゃあまた」
「こちらに来させてもらいます」
「そうしてくれよ」
笑顔で話してそうしてだった。
バーテンダーは二人を笑顔で送った、そして二人も笑顔でまた来ますと言ってそのうえで店を出た。すると。
前田は橋本に店の扉を見つつ話した。
「いや、本当にです」
「辛い中でもな」
「こうした場所があるとですね」
「まだ大丈夫って思えるな」
「そうですね、まあインフレも」
「ずっと続くインフレもないからな」
橋本は前田に話した。
「デフレだってな」
「ずっと続かないですね」
「ああ、何時かは落ち着いてな」
そうなってというのだ。
「終わるさ」
「そうですよね」
「だからな」
「物価も下がりますね」
「そうなるさ、それまでな」
「耐えることですね」
「今のややこしい情勢も終わる」
国際情勢の中のそれもというのだ。
「絶対にな」
「そうなればですね」
「インフレも終わってな」
「落ち着いてですね」
「物価も収まる、それまではな」
「このお店をですね」
「オアシスにするか」
心のそれにというのだ。
「また来て」
「そうですね、それじゃあ」
「今はな」
「帰りますか」
「そうしような」
これまでの物価のことを話す深刻で嫌そうなものは消えていた、そうしてだった。
二人で笑顔でそれぞれの部屋に戻った、そのうえでだった。
共に時々そのバーに行って飲んだ、それは情勢が変わりインフレが落ち着いてからもであった。何時しか二人にとってこのバーはすっかり憩いの場になっていた。そして二人はそれを心からよしとした。
古いバー 完
2022・10・18
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