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桐と琴
第二章

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「この琴は自然と音を出ししかもとても奇麗な声を出すが」
「何故かですか」
「これは一体。それにお主は」
「はい、それがしは仙人です」
 老人は畏まって答えた。
「そして貴方様が万歳老であられることもです」
「わかるか」
「黄衣を着ておられずとも」
 今は狩りの身なりでそれではなかった、皇帝が着るべき服ではなかった。
「ですがそのたたずまいで」
「朕のことがわかったか」
「はい、それで万歳老が近頃です」
「まさか琴のことか」
「満足しておられぬとです」
「聞いておったか」
「聞くつもりはありませんでしたが」
 それでもというのだ。
「仙人になりますと」
「耳に入るか」
「千里眼と千里の耳も手に入れるので」
 その両方をというのだ。
「どうしても」
「それでか」
「そして」
 そのうえでというのだ。
「実は以前この琴を黄河の南で手に入れまして」
「そうであったか」
「あまりにもよい桐の木があったので」
「その桐の木をか」
「森の王とまで呼ばれていましたが」
 皇帝にこのことも話した。
「その木をこの琴に変えました」
「そうであったか」
「そしてこの琴は桐のままですので」
 琴の姿になってもというのだ。
「そうであるので」
「そうした音を出せるのか」
「はい、桐の木が自らが知る音をです」
 まさにそれをというのだ。
「奏でる様に願いますと」
「そなたがか」
「そうするとです」
「出してくれるのか」
「そして励ますと」
 願うと共にというのだ。
「そうなります」
「そうであったか」
「はい、それでなのです」
「そうした琴の音になるか」
「左様です」
「そうか、どうもだ」
 皇帝は今も奏でられている琴の声を聴きつつ述べた。
「朕は近頃琴に満足していなかったが」
「それはですか」
「今日この声を聴く為であったかもな」
「そう思われますか」
「うむ、自然の音」
 こう言うのだった。
「そうやもな、幾ら素晴らしい楽士達が見事な琴を使って奏でてもな」
「それでも自然の声ではないですか」
「うむ、人のものだ」
「人のものではなく自然の楽を聴きたくなっておられましたか」
「そうやもな、人のものに少し飽いて」 
 さらにというのだ。
「自然のものの方がな」
「よいとですか」
「そうやもな、この度の音実によかった」
 笑みを浮かべてだ、皇帝は仙人に述べた。
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