第三章
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「もうそれからずっとな」
「ひいひいお祖父ちゃんに夢中なの」
「今でも恰好いいとか優しいとか言うな」
「この世で一番、いえ」
夏実がいつも言っていることを話した。
「宇宙で一番の男前だってね」
「もうそう言ってな」
「結婚して」
「ずっとな」
今に至るまでというのだ。
「結婚して八十年以上経つがな」
「ダイアモンド婚二十年以上超えても」
「そう言ってるからな」
「つまりあれね」
三奈美はここまで聞いて理解した。
「ひいひいお祖母ちゃんの心は」
「ああ、十代のな」
「今で言う女子高生のままなのね」
「家事とか世の中のことは色々知ったけれどな」
生きて来てというのだ。
「けれどな」
「心自体はなのね」
「今もな」
それこそというのだ。
「その頃のままななんだよ」
「十代の頃からの」
「気持ちがずっと若々しいと元気でな」
「外見もなの」
「そうなるのかもな」
「ひいひいお祖母ちゃんはずっと乙女なのね」
「そうだろうな」
「それで百一歳の今もなのね」
三奈美は言った。
「十代のままの外見なのね」
「そうかもな」
「何かね」
その話を聞いてだ、三奈美は言った。
「ひいひいお祖母ちゃんって凄いわ」
「ずっとその時の心のままだからか」
「長生きもそれであの外見も凄いけれど」
最も凄いことはというのだ。
「十代の、乙女のままね」
「わしを好きでいてくれてな」
「そのままずっと生きていることがよ」
「だからわしも女の人は婆さんしか知らんしな」
「ひいひいお祖母ちゃんもなのね」
「わしだけだ、その心がな」
まさにというのだ。
「あの姿にな」
「そのままなっているのね」
「気が若いとな」
龍之介は笑って話した。
「外見にも出るんだ」
「ひいひいお祖母ちゃんは極端でも」
「そういうことだ、婆さんはもうずっとな」
「その心で」
「あの外見だからな」
「そういうことね、わかったわ」
三奈美は龍之介の言葉に頷いた、そうしてだった。
夏実に対してこれまでの様にいつもその外見について言われることはしなくなった、だが。
彼女と一緒に外を歩いてだ、こう言われるのは常だった。
「あの黒髪の娘可愛いな」
「ああ、滅茶苦茶可愛いな」
「スタイルも肌も抜群だな」
「モデルかアイドルかもな」
「声も可愛いし声優さんかもな」
「何処の高校だろうな」
「全く、皆言うんだから」
真相を知っている三奈美はやれやれという顔で笑って述べた。
「わかってないわね」
「こんなお祖母ちゃんにね」
「そうは見えないから言われるのよ」
時々でもこう言った、彼女の外見は変わらないので。
乙女の恋愛 完
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