第三章
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「それだけでね」
「駄目なんだね」
「そう言って実際にね」
「入れなかったんだ」
「あの子も阪神ファンだけれど」
田原と同じくだ、こう言う利奈もである。
「ゲームも阪神で」
「阪神に入れなかったんだ」
「そうだったのよ」
「そうか、ゲームでもそんな要素あるんだね」
田原ははじめて知ってしみじみといった顔と言葉で言った。
「そうなんだね」
「そうなの、それでね」
「阪神でプレイしているんだ」
「あの子はね」
「そう、そうした選手がいたら」
チームにというのだ。
「それだけでね」
「チームの雰囲気が悪くなって」
「勝ちにくくなるよ」
「そうなのね」
「だからヌートバー選手はね」
彼はというのだ。
「今回のＷＢＣにおいてだよ」
「優勝にかなり貢献してくれたのね」
「チームの雰囲気をよくしてくれたから」
それだけにというのだ。
「凄くね」
「よかったのね」
「あの人の存在がね」
こう言うのだった。
「やっぱり違ったよ」
「そういうことね」
「若しヌートバー選手がいなかったら」
田原は真剣な顔で言った。
「どうなっていたか」
「優勝出来なかったかも知れないのね」
「そう思うよ」
こう言うのだった、田原はそのうえで自分もＷＢＣの侍ジャパンの優勝を喜んだ。そのうえでだった。
ペナントを迎えた、彼が家族と共に阪神を応援していたが阪神の順位はころころと変わった、だが。
阪神がライバルと長年認識している巨人は低迷していた、それはこの日もで。
「いやあ勝った勝った」
「阪神大勝利ね」
「十五対零でね」
田原はこの時もテレビで観ている、それで言うのだった。
「勝ったよ」
「昨日は負けたけれどね」
「今日は勝ったよ」
「よかったわね、ただね」
ここで妻は言うのだった。
「巨人今年は一段と悪いわね」
「これは最下位もだよ」
「有り得るわね」
「うん、もう巨人はね」
邪悪の権化であるこのチームはというのだ。
「今年も優勝しないだろうね」
「こんなのだとね」
「うん、何もかもがチグハグだよ」
「やっぱりあれかしら」
利奈は敗北に明らかに苦い雰囲気になっている巨人ベンチを観つつ言った。
「原監督がね」
「采配とか言われてるね」
「監督さんになって長くなり過ぎて」
「それはあるね」
田原も否定しなかった。
「今三期目でね」
「凄く長いわよね」
「巨人の監督で最長記録でね」
「やっぱり長過ぎるとね」
「一人の人がずっと監督をしても」
そうなってもというのだ。
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