第81話 絆を深める
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フィーが急にそんな事を言ってアリサが目を丸くした。俺は慌ててフィーに止めようとする。
「急にごめんね、でもアリサってイリーナの名前を聞いたり話をしたりすると何だか寂しそうな目をしていたからつい……わたしは家族って暖かくて優しくしてくれるものだって思ってるから気になっちゃって……」
なるほど、フィーからすれば家族は優しさと愛情の象徴みたいなものなんだな。それがあるから嬉しくなるし暖かさを感じる、それは俺も同意見だ。
だからこそ寂しそうな目をしたアリサが気になったんだろうな。
「そっか、フィーは家族をそう思ってるのね。私もそう思うわ、でも今は家族と仲良くできないの」
「どうして?」
「私、お母様の気持ちが分からないの。昔はもっと笑みを浮かべる人だった、お父様や私の為に慣れない料理を頑張ったり一緒に旅行したり……今でも楽しかったって鮮明に思い浮かぶくらいに暖かくて素敵な家族だったわ。でもお父様が事故で亡くなってからお母様は変わってしまった。仕事に没頭するようになって私の事を相手してくれなくなったの。仕舞いにはお爺様から会長の座まで奪い取って……」
「アリサさん……」
アリサの家庭の事情にフィーとエマは複雑そうな表情を浮かべた。ラウラとティオも思う事があるのか何かを考えこんでいる。
家族との仲が上手くいかないのって辛いよな……俺も昔団長とケンカしたことを思い出した。
でも俺達はその度にお互いを理解して絆を深めていった。だがアリサとイリーナさんは気持ちがズレていく一方のようだ。
「私、何度もお母様と話し合おうとしたわ。何回も何回も粘ってようやく一緒に食事をする機会を作ってもらってね、その日を楽しみにしていたんだ。でもお母様が急な仕事が入ったってボイコットしたからそれで我慢の限界が来て……」
「家出したのか、それは何というか……ごめん、上手く言えないや」
アリサの悲しそうな顔に俺は慰めの言葉をかけようとしたが上手く言えなかった。仕事人間だとは思っていたけどここまでとは……
まあイリーナさんにも事情があるんだろうけどそれを理解しろと言うのはアリサに酷だよな、まだ10代半ばだろうし親に甘えたい歳だ。
家出したくなるほど悲しかったんだろうな。
「結局家出も出来なかったけどね」
「えっ?」
「それから数日後にようやく家出の準備が出来たから実行しようと思ったんだけどシャロン……私の家に仕えているメイドなんだけど彼女がリベールの中央工房に私が研修に行く手立てがすんだって言われてなし崩し的に連れてこられたって訳。きっとお母様は私が家出するって分かっていたんでしょうね……だから先手を取っていたんだわ。でもそれなら一言謝ればいいじゃない!
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