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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
賊徒の末路 その1
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ざとよぎった。

(『残された道は、ただ一つ……』)
うつむいていた顔を上げる。
(『このレバノンの首都ごと、テロリストどもを完全に葬り去る』)



 赤色テロリストへの憎悪が、たぎる血潮を高ぶらせる。
共産主義者(テロリスト)が、勝手なことを……」
マサキは、天を仰ぐと、小声でつぶやく。
「このうえは、レバノンもろとも、テロリストを吹き飛ばす」
力強く操作卓のボタンを連打し、攻撃準備を始めた。

 美久は、必死に、怒りを表すマサキをなだめようとする。 
「お気持ちはわかりますが、お止めください。
まだ避難できていない住民が多数おりますし、近くにはパレスチナの難民キャンプが……」
マサキは、諦めたかのように乾いた笑い声をあげ、右の食指でメイオウ攻撃の射撃指令を出す。
「フフフ、そのような人非人(ひとでなし)は、俺が作る新世界には必要のない」
顔に暗い影を落としながら、冷酷に告げた。
 
 直後、静止していたゼオライマーは両腕を勢いよく、胸の球体の前に掲げる。
大地が裂けるような衝撃波とともに、眩いばかりの光が市街を照らす。
強烈な熱波の後、地表から巻き上げられたチリや煤は、やがて白い爆煙として立ち上っていった。



 そのころ、鎧衣たちといえば。
彼等は、米海軍が差し向けたF4戦術機小隊の支援により、辛くも窮地を脱していた。
八台のHH-53B/C スーパージョリーグリーンに救助されて、米兵たちとともに乗り込む。
 まもなくベイルートを後にし、遠くなっていくソ連軍基地を見ながら、ぼんやりしていると、
「なんだ、あの光!」
米兵の誰かが叫んだかと思うと、強烈な閃光とともに、雷鳴のような轟音が鳴り響く。
 
「まさか、ゼオライマーの……」
おもわず口走ってしまったことを後悔する間もなく、白銀が訊ねてきた。
「鎧衣の旦那、あれが木原先生(センセ)のマシンの攻撃なのですか。
デイジーカッターと同じくらいの威力はありますよ」

 その発言に、デルタフォースの部隊長が仰天して、
「白銀君、あれはデイジーカッターの爆風どころではない。
自分は北ベトナムの大部隊と戦った時に、航空支援を頼んだ折、至近弾を間近で浴びたが、その威力の数倍、十数倍あると思っている」

「でも旦那、あなたはハバロフスクに潜入して先生(センセ)と行動を一緒にされたんじゃ」
 ゼオライマーは、公然の秘密だった。
日米の間とはいえ、秘密裡にして置く必要があるとみえ、鎧衣は、いつになく厳として、
「白銀君、それ以上は止めたまえ」と、(いまし)める。

 見かねた隊長は、彼らを止めに入った。
「まあ。まあ。ご両人ともこんなところで言い争っても仕方ありません。
木原博士と合流した後に詳しい話を聞かせてもら
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