第二部 1978年
影の政府
賊徒の末路 その1
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決断を下す。
「全機に次ぐ、これより全速力をもって、敵の追撃を断ち、空母「エンタープライズ」に向かう」
跳躍ユニットのロケットエンジンを全開にすると、高度を上げて、戦闘空域から離脱した。
その頃、ベイルートは混乱の渦に巻き込まれていた。
ゼオライマーの登場で、破れかぶれになったPLFPなどの団体が、黒い怒濤を持って、市内の略奪を開始した。
アラブ民族社会主義を掲げるPLO、PLFPと、この国の指導層であるキリスト教マロン派の両者は相入れぬ関係であった。
1970年のPLOのベイルート移住以来、両者は度々武力衝突を重ね、その不満はたまっていた。
ついに米艦隊の艦砲射撃を受け、混乱する市内の略奪という暴挙に走ったのだ。
マサキは、ゼオライマーの球体上のメインカメラを市中に向けてズームする。
画面に映る街の様子といえば、真っ赤に焼けていた。
女子どもは、焔の下に悲鳴をあげて逃げまどい、昼のようにベイルート市中は明るい。
見れば、悪鬼のような人影が、銃剣をふるい、銃を放ちながら、逃げ散る者を見あたり次第に殺戮していた。
目をおおうような地獄が再現されていた。
『ああ、人間というものは、ここまで醜くなれるものか……』
マサキの胸中は、人間への絶望に覆われ始めていた。
『所詮、パレスチナ解放という大義を掲げても、やることは強盗や賊徒と変わらぬではないか』
氷のような感情が、ふたたびマサキを覆い始めていた。
あの可憐な少女、アイリスディーナとの出会いを受け、僅かに溶け始めていた厚い氷河。
彼女の純粋な想いすらも、忘れさせるほどの衝撃だった。
そのとき、マサキの心中に暗い情念が渦巻く。
(『このような輩が、この世に存在しては拙い』)
思えば前の世界でも、日本赤軍などの赤色テロリストが、このアラブの過激派を頼り、世界を震撼させた。
イスラエルのテルアビブ空港での銃乱射事件や、よど号などの日航機ハイジャック事件。
オランダ・ハーグの仏大使館やマレーシア・クアラルンプールの米国大使館等を占拠し、国際関係をも悪化させた。
国内でも、妄想の実現のために、彼らはお構いなしだった。
銀行強盗や警察署の襲撃、自衛隊施設への侵入は無論のこと、民間企業にもその矛先は向いた。
三菱重工や鹿島建設などの有名企業を爆破し、韓国産業経済研究所やチリの練習艦などの外国施設への襲撃で血の雨を降らした。
革命を誓う同志すらも疑い、妊婦にまで手をかけた人の皮を被った悪魔。
人面獣心との言葉が、ふさわしい連中であった。
日本列島を赤化せんとする野望のために、テロルの恐怖で、無辜の市民がのたうち回る。
彼の脳裏に、その地獄絵がまざま
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