第六章
[8]前話
「それがね」
「優勝出来なくなったね」
「それを見たら」
巨人のその状況をというのだ。
「やっぱりね」
「あの人に何かあるのかな」
「そうじゃないかしら」
「有り得るね、来た事情もね」
「事情だしね」
「そう考えたら」
さらに言うのだった。
「あの人がいてくれたら」
「巨人はあのままかもね」
「そうかもね」
こう話すのだった。
「実際あのシーズン途中まで巨人優勝しそうだったのに」
「あの人来から調子を落として」
「それでね」
「それから優勝していないしね」
二人で話した、そしてだった。
寿は考える顔で千佳に言った。
「僕達はあの人に感謝すべきかな」
「あの人が来てから優勝出来なくなったから」
「うん、巨人がね」
「あの人巨人の確かな戦力だけれど」
「打つからね、けれどね」
それでもというのだ。
「あの人だけが打ってもね」
「勝てないわね」
「多少試合に勝っても」
この選手が打ってというのだ。
「チーム全体の雰囲気が悪くなって」
「あの人もいつも打つ訳じゃないし」
「巨人が優勝出来ないならね」
それならというのだ。
「あの人に感謝すべきかな」
「そうね、言われてみれば」
千佳もそれはと頷いた。
「あの人がチームの雰囲気悪くしてるの間違いないでしょうし」
「ああした人がこれからも巨人にいてくれたらね」
「巨人は優勝出来ないから」
「いいよ、疫病神は敵にいるものだよ」
それが最善だというのだ。
「こっちにいなくてね」
「カープや阪神に」
「巨人にいてくれることが」
まさにというのだ。
「一番いいよ、だからね」
「あの人はずっとね」
「巨人にいて欲しいよ」
「ええ、巨人が負けが増えて優勝出来ないなら」
「あの人は僕達にとって有り難い存在だよ」
こう妹に言うのだった。
「そして巨人はこれからもね」
「弱くあるべきね」
「そうだよ、弱い巨人程いいものはないよ」
寿はこう言った、そしてだった。
この日の試合の結果を確認した、巨人は見事十五対零で敗れた。寿だけでなく千佳も巨人に相応しい負け方に心から喜んだ。
弱い巨人最高 完
2023・4・28
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