第十四話 白波五人男その十
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「歌舞伎の紹介の本でもな」
「五人男が出てもか」
「歌舞伎の中で人気作やからな」
そう言っていい作品の一つである、弁天小僧が知らざあ言って聞かせやしょうと啖呵を切る呉服屋の場面も連ねも人気がある。
「ほぼ必ず紹介されてるが」
「それでもか」
「五人男が紹介されて」
「ヒロインはか」
「ほぼ確実にな」
芥川は真顔で話した。
「紹介されん」
「特撮で時々存在感ないヒロインおるな」
こう言ったのは羅だった。
「そやな」
「ああ、作品によってな」
「そのヒロインよりもか」
「そうしたキャラでも出番多いやろ」
芥川は羅にこう返した。
「五人の戦隊でも主人公のサポート役でも」
「彼女さんでもな」
「出番自体は多いやろ」
「ああ、やっぱりな」
「その分遥かにましや」
芥川は言い切った。
「これがや」
「五人男のヒロインはか」
「もう出番すらや」
これ自体がというのだ。
「前半出て来て自害して終わりや」
「それで後半出番なしか」
「後半の場面が人気がある作品やからな」
「物凄い不遇やな」
「ほんま遠しでもないとな」
それで上演しないと、というのだ。
「出番がない」
「船体のそうしたヒロインよりも遥かに酷いか」
「ここまで不遇なヒロインもな」
芥川は首を傾げさせつつ話した。
「ちょっとな」
「おらんか」
「そやろな」
こう言うのだった。
「僕もそう思うわ」
「作品紹介で紹介されんヒロインとかな」
羅はかなり引いた顔になって述べた。
「中国でもな」
「そうおらんやろ」
「三国志演義でも水滸伝でもな」
「どっちも男ばかりの作品やな」
「演義やと貂蝉有名やしな」
呂布と董卓を惑わし二人の仲を割くこの美女がというのだ。
「水滸伝でも豪傑の中に女性おるしな」
「扈三娘さんとかな」
「この塔にもおるしな」
神霊の一柱としてだ。
「百八の豪傑の中の三柱でな」
「出て来るな」
「そやからな」
「水滸伝でも出て来るな」
「しっかりとな、西遊記でも封神演義でも重要と言ってええ女性キャラ出るわ」
「西遊記では敵やな」
「ああ、しかし紹介ですら出て来んヒロインは」
羅は引いた顔のまま述べた。
「ほんまないな」
「恐ろしい作品やな」
メルヴィルも言った。
「つくづく」
「言うば弁天小僧さんをヒロインとしたらな」
「そうなるか」
「そうやけどな」
これがというのだ。
「作品の正規のヒロインはや」
「出番殆どなしか」
「上演で出ることは滅多にない」
「不遇中の不遇キャラやな」
「ああ、五人男ばかり目立って」
そうしてというのだ。
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