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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第六十七話 箱の中の腐った林檎
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そのスタッフを昇進させない訳がない。今回の事はそれほどのインパクトがあります」
「たかが、といってはなんだが、不正を暴いただけでそんなにインパクトがあるのかい?」
自分で訪ねておいて、アッテンボローがジャーナリスト志望だったのを思い出した。彼はまたグラスの中身を一気に空にすると、身を乗り出して目を細めた。
「建国以来の同盟最年少の准将が、前線をまとめる宇宙艦隊司令長官、ロボス元帥の不正を暴いた…しかもその准将は英雄、国防委員長と統合作戦本部長の秘蔵っ子だ。マスコミの中では既にシトレ元帥とロボス元帥の対立図式が出来上がってるんですよ。彼等ががどう書くか、簡単に予想がつきますよ。こぞって煽り立てるでしょうね」
アッテンボローの目は輝いていた。
「不正を暴いた事が予期しない物でもかい?」
「ええ。論調としては不正を調査するために准将が派遣された、という風に書かれるでしょう。彼等も食わなきゃいけない、市民の興味を引く様な記事にして部数や視聴率を稼ぐのは当たり前です。しかもこの場合そう書いても事実とはそう遠くない」
「…お前さん、ジャーナリスト志望だったな。ジャーナリストじゃなくても政治家でもやっていけそうだ」
「そうですか?」
「政治家、というより革命家、かな。お前さんに煽動された義憤混じりの市民が時の政府を倒すのさ」
「面白そうですね、それ。そうなったら時の政府首班はトリューニヒト氏あたりか…しかしトリューニヒト氏なら今回の件、最大限に利用するでしょうね。となるとますます准将や我々の昇進は確実です」
私はともかく、皆昇進が嬉しくない筈がない。士官学校出身者なら、皆一度は統合作戦本部長や宇宙艦隊司令長官を目指すのだ。しかし今回昇進するとしてもそれは政争に巻き込まれた結果ではないのか。ウィンチェスターはともかく、我々は功績らしい功績は立てていないのだ。ウィンチェスターはどう思っているんだろうか…。


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