敢闘編
第六十七話 箱の中の腐った林檎
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た。一部の補給担当の士官達が行った事だった。そして、野戦憲兵隊なる部隊を派遣して俺達を拘束しようとしたのも彼等だった。俺達の事を視察団ではなく監察団だと怯えていたようだった。
ロボス提督の名前を使えば何でも出来る事に気付いた彼等は貴族達の資産ー特に採掘された鉱物資源や特産品ーを横領し、それを企業に低価格で売却していた。当然企業から見返りは発生するが、タダ同然で手に入る大量の資源の前には、悪徳士官への賄賂など安いものだ。そして書類には提督のサインがあるから誰も不審には思わない。二重に帳簿が作られ、売却利益は不正を行っている補給士官の懐に入る。貴族の話を聞いて不正が行われていると感じた俺は、身の安全を確保した上でシトレ親父に連絡を取った。まあ、間一髪だった訳だが…。
「単価は安くても、量が量だから懐を潤すには充分な金額になりますね」
オットーも呆れ顔だ。
「しかも貴族達に払われる筈の金は帳簿上払われている事になっている。この金は軍や通商委員会の特別会計予算から出ているんだが、一部しか払われていないとなると、裏金としてプールされているんだろうな。軍だけではなく他の委員会にも不正の協力者がいると見て間違いない。此処のトップはロボス提督だから、そいつらの監督責任まで提督が被る羽目になる…とんでもない事になるぞこれは」
一人だけ食後の紅茶を啜っているヤンさんが会話に交ざるとラップさんが意外な顔をした。
「お前さんはこの手の話に疎いと思っていたが…」
「私も金で苦労したクチなんでね。金があれば軍人にはなっていなかったし、いち市民としては税金がちゃんと運用されているか気にもなるさ」
「全くその通りだな。だが、これでお前さんの嫌いなトリューニヒト氏の株が上がる事になるな」
「…トリューニヒト氏が真っ当に職務に精励しているなら問題ないよ、ラップ。まあ、気には入らないけどね」
ヤンさんとラップさんは肩をすくめて苦笑している。まあ…ヤンさんのトリューニヒト嫌いはともかく、今回の件で奴の株が上がるのは間違いない。だが、上げ方が問題だ。公表するのか、隠蔽するのか。
「閣下、ケンタウリから緊急電が入っております」
個人携帯端末が着信を伝える。端末の画面に映っているのはフォークだった。
「緊急電?」
「はい、国防委員長からの通信があったそうです。艦長は一度艦に戻ってはいただけないか、と申されて居りました。シャトルの準備は整っております」
将官は忙しいな、と囃すマイクの声は放っとくとして…何かあったのか??ローザス少尉が急いで残りのステーキをぱくついている…そんなに焦らなくても…。
18:45
同ホテル、ヤン・ウェンリー
ウィンチェスターはローザス少尉と共に戦艦ケンタウリに戻って行った。となると残留組の中では私
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