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星河の覇皇
第八十三部第四章 戦線崩壊その五十二

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「違う、だからな」
「絶対とはされないですね」
「あくまで非常の時のみ」
「そうされますね」
「そうだ」
 こう言うのだった。
「コーランそしてそれに基づくイスラムの法は寛容だな」
「はい、非常に」
「その実はです」
「他宗教には厳格と言われても」
「実は違います」
「非常に寛容です」
「柔軟性も非常にある」 
 それがコーランであるというのだ、この時代でもイスラム社会はコーランがその文明の根幹にあり法律も然りなのだ。
 そしてだ、その法律はというのだ。
「だからだ」
「それ故にですね」
「国家元首即ち皇帝親征もですね」
「原則としてはしてはなりませんが」
「危急の時は」
「国家存亡の時は」
「あくまでサハラが滅亡するかどうかであり」 
 条件が示された、最初はこれであった。
「そしてだ」
「さらにですね」
「皇帝、その方に軍事的才能がおありで」
「それならばですね」
「そうした条件が揃ってこそだ」
 まさにというのだ。
「親征をしてもいいが」
「その双方がないならば」
「皇帝ご自身の出陣は行わず」
「戦場は軍人のものとする」
「軍人に任せるのですね」
「戦争をしていても国家は動く、つまりだ」
 アッディーンはさらに話した。
「戦場以外の国政もだ」
「まさに常にですね」
「動いていますね」
「その為常に戦場におられるよりも」
「帝都においてですか」
「政治にあたるべきだ、首相を首班とした内閣や議会に国政を委ねてもだ」
 例えそうしてもというのだ。
「サハラの主権者は皇帝となるな」
「はい、国家元首であられる」
「憲法でそう定められますね」
「その憲法はまだ作られてもいませんが」
 そして発布もされていないというのだ。
「しかしですね」
「それでもですね」
「主権者が皇帝であるなら」
「そのご公務もですね」
「多くなる」
 そうなることが当然だというのだ。
「だからだ」
「それが為ですね」
「迂闊に戦場に出て公務をおろそかにしますと」
「国政が滞る」
「そうなりますね」
「そうなるからだ」
 こうなることが自明の理だからだというのだ。
「やはりな」
「幾ら戦場のことが不安でも」
「軍人を信頼してですか」
「任せるべきですね」
「自軍を信じられない皇帝はそれだけで落ちる」
 皇帝としてとだ、アッディーンは言い切った。
「最早な」
「そうなりますね」
「どうしても」
「信頼出来る軍を備えられない」
「そうであるので」
「ナポレオンは私が今言っていることでは失格だ」
 皇帝ひいては国家元首はみだりに戦場に出るべきではないというその考えでは、というのだ。
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