第二章
[8]前話
その本がある店に行った、大石はそこで小川にその本を紹介した。
「これです」
「あっ、これは」
小川はそののらくろの単行本というものを見て言った。
「違うよ」
「違う?」
「これは田川水泡先生ののらくろじゃないよ。ほら先生の名前がね」
「あっ、そういえば」
見ればだった、確かに。
名前が僅かだが違っていた、大石もこれには目を丸くさせた。
「そうですね」
「この頃著作権の概念なんてね」
「なかったですか」
「そうなんだ、それでね」
その為にとだ、小川はさらに話した。
「のらくろのハンガーとかを先生の承諾なしにね」
「色々出してたんですか」
「そうだったんだ」
「昔はそうだったんですね」
「それでね」
小川はさらに話した。
「こうした絵柄はそっくりでもね」
「実は違う人が描いていた場合もあったんですね」
「他の人でもあったみたいだけれど」
「田河水泡先生についても」
「田河先生は特に多いみたいだよ」
「人気があっただけに」
「そうなんだ、だからこの作品はね」
その単行本を見つつ話した。
「残念だけれどね」
「買えないですか」
「うん、僕が探しているのは本物だよ」
買うものはというのだ。
「だからね」
「すいません、僕のミスです」
「いいよ、それよりも折角来たんだし」
この店にとだ、小川は謝る大石に笑って話した。
「掘り出すものがあるか探そうか」
「そうしますか」
「うん、何があるかな」
笑顔で言ってだった。
小川は大石と共に本を探した、そのうえでこれはという漫画を買って自分もそうした大石と別れてだった。
家に帰った、それで妻に今日のことを話すとこう言われた。
「それって美空ひばりさんと一緒ね」
「ああ、あの人も偽物一杯出たね」
「そうでしょ、それと一緒ね」
「昔はそれでもよかったんだよ」
「そうした時代ってことね」
「うん、よくも悪くもね」
妻に達観した顔で話した。
「そういうことだよ」
「昔は昔、今は今で」
「まあそうした時代だったってことだよ」
「そうね、じゃあそのことも頭に入れて」
「これからも集めて読んでいくよ」
こう妻に言ってだった。
小川は買った本を自室に持って行って保管した、そして有色になると夫婦で楽しく食べたのだった。この時は漫画の話はせず世間話をした。
その漫画は本物か 完
2023・4・23
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