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仮面ライダーAP
凶兆編 仮面ライダータキオン&エージェントガール 後編
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しくなってしまう。
 その焦りもあり、ヘレンはぷいっと顔を背けていた。そんな彼女の横顔に皮肉めいた捨て台詞を投げると、駿も仲間達の後に続き、愛車であるGチェイサーに跨って行く。だが、すぐに発進しようとはせず――彼はおもむろに、黒いレザージャケットの懐から煙草の箱を取り出していた。拘りがあるのか、かなり古い銘柄のようだ。

「……上福沢、火をくれ」
「全く、仕方がないな君は」
「森里、煙草も程々にしておけ。健康に悪いぞ」
「改造人間の健康を心配するとはナンセンスだな、熱海。生憎だが、俺の身体は今さらニコチン如きでどうにかなるほどヤワな作りではない」
「俺達にとっちゃあ等しく『人間』だろうが。……1本までにしておけよ、森里。いつまでもここでチンタラしてるわけには行かねぇんだからな」
「……ふっ、それもそうか。今のうちにあんたも吸っておくか? 南」
「いや、俺はやめておく。そろそろ本子(カミさん)に怒られちまいそうだからな」

 幸路が持っていたライターで煙草に火を付け、僅かに一服した後。駿は仲間達と共に、愛用のマシンでこのエンデバーランドから走り去って行く。それは約1分にも満たない、彼らにとっての貴重な「休憩時間」であった。

 ――今回のテロに投入されたノバシェード側の最高戦力である腕力特化型が制圧された今、彼らでなければ倒し切れない敵はもうこの街には居ない。であれば直ちに、彼らは仮面ライダーの力を必要とする「次の現場」に向かわなければならないのだ。駿達は約2年間に渡り、ほとんど休むことも許されないままそのような生活を続けている。
 駿がわざわざ幸路達を待たせて煙草を吸い始めたのも、「勝手な行動をする者が居たため出発に遅れが生じた」という状況を作り、仲間達の足をほんの僅かでも休ませるための「口実作り」でしかない。どれほど世界中を飛び回ろうと、どれほど疲れ果てようと戦い続けなければならない仮面ライダーである彼らが、それでも1人の人間で在れる微かなひと時。それが、1分足らずの喫煙だったのである。

 そんな束の間の休息を終え、旅立って行く仮面ライダー達の背中を、見えなくなるまで視線で追い続けていたヘレンは――切なげな表情を浮かべ、桜色の唇をきゅっと結んでいた。

(……本当、嫌いっ……)

 それから、間もなく。ライダー達によって無力化された腕力特化型の者達をはじめとする、ノバシェードの戦闘員達は全員が射殺、あるいは逮捕され――このエンデバーランドで発生した武装蜂起は、僅か数時間で鎮圧された。

 そして、駿達4人が「次の現場」を目指してこの国を発った後。世界的な慈善活動家として知られているベイカーをノバシェードから守り抜いたとして、ヘレンは某国政府から勲章を授与されたのだが――当の本人は、終始腑に落ちない表情を浮かべ
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