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仮面ライダーAP
凶兆編 仮面ライダータキオン&エージェントガール 前編
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察や軍隊ではひとたまりもないのだ。
 仮にも戦闘のプロフェッショナルである軍人達でさえ歯が立たない、改造人間達の愚連隊。その暴走を即座に止められる戦力がこの街に居ない今、逃げ惑う市民達は狩られるだけの獲物でしかない。

 その地獄絵図を目の当たりにしている、恰幅の良い1人の男性は、あまりの光景に腰を抜かして震え上がっていた。
 遠方の小都市から出張でこの首都に来ていた、観光都市「オーファンズヘブン」の市長こと、ドナルド・ベイカー。ノバシェードの暴虐に恐れをなした彼は、近くに停車していた黒塗りの高級車の影に飛び込んで行く。

(なんなのだ、これは……! これが本当に、現実の光景なのか……! あ、悪夢だ……!)

 先ほどまで周りに居たはずの秘書も護衛も、血の池に沈んだ骸と化している。高級車に隠れている自分も、今に発見されて同じ命運を辿るのだろう。
 彼がその覚悟を固める暇もなく――武装したノバシェードの戦闘員達は、高級車の陰で震えていたベイカーの姿を見つけてしまうのだった。

「おぉ〜? なんだなんだ、こんなところにもくたばり損ないが隠れていやがったぜぇ」
「ひ、ひぃっ……!?」
「いかにもな上流階級、って感じのオッサンだなァ。ぶっ殺し甲斐があるってもんよ……!」

 懸命に生き延びようと足掻いていた者を嘲笑う、常人ならざる改造人間の兵士達。いつしか身体のみならず、心までも怪物に成り果てていた彼らは口角をあげ、容赦なくベイカーの頭に銃口を向ける。

 もう逃げられない。自分は間違いなく殺される。そう思い至った彼の脳裏に過ぎったのは――故郷の街に残して来た、自身の家族だった。

(あぁ……済まない、皆……! 君達を置いて逝くことになる、非力な私を許しておくれッ……!)

 ベイカーが市長を務めている都市であり、彼自身の故郷でもあるオーファンズヘブン。
 そこで暮らしている孤児の少女達は皆、旧シェードのテロによって親兄弟を失った者ばかりだった。ベイカーが家族として迎え入れ、実の娘達のように育てて来た彼女達は今や、街でも評判の美人に成長している。

 願わくば、彼女達全員が愛する男と出会い、自分の元から巣立って行く日まで生きていたかった。家族を失い、辛い思いを背負って生きて来た彼女達が幸せになる瞬間を、見届けたかった。
 しかし、それはもう叶わない。自分はもう次の瞬間には、ノバシェードの凶弾に斃れてしまうのだろう。ならばせめて、せめて娘達の幸せを願いながら死んで行きたい。

 僅かな時間の間に、その覚悟を決めたベイカーが、きつく瞼を閉じて死の瞬間を待つ。だが、その時が訪れることはなかった。

「がはッ!?」
「おごッ……!」

 乾いた発砲音と共に頭部を撃ち抜かれ、即死したのはベイカーではなく、彼に銃口
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