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仮面ライダーAP
特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 第7話
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 隊長格の男が逃走を始めたことで国防軍の指揮系統は大きく乱れ、退却命令を待たずして後退を始める兵士達が続出していた。この森全体が火に包まれている以上、すでに逃げ場など無いのだが、彼らはそれを知らぬまま自らの命を優先しようとしている。

 そんな彼らの前に立ち塞がったのは――和装に身を包んだ黒髪の美女。おかっぱに切り揃えたその小柄な女性は、澄んだ眼差しで兵士達を見つめていた。

「な、なんだこいつ……!」
「着物の女……!?」

 この場には似つかわしくない格好で現れた彼女を前に、国防軍の兵士達は警戒した様子で突撃銃を構えている。
 略奪や暴行に走ることなど珍しくもない普段の彼らなら、女と見るやすぐさま組み敷き、その和装を引き裂こうとしていたところだが。この状況に居合わせている女がまともであるとは思えない以上、油断は出来なかったのである。

 そして、その判断は的中していた。彼らにとって何よりも残酷なのは、それが正解だったとしてもどうにもならないことだろう。

「皆様、はじめまして。……そして、さようなら」

 鈴を転がすような声が響き渡る瞬間、女性は怪人としての姿に「変身」する。
 髪と肌が灰色に変色し、肌は蛇のような鱗状に変異して行く。おかっぱに切り揃えられていた髪は腰まで伸び、髪先は蛇の頭のようになっていた。

 羽柴柳司郎の妻にして、改造人間の傭兵(サイボーグ・マーセナリー) の1人でもある加藤都子(かとうみやこ)こと、ハイドラ・レディ。

 その悍ましい変異後の「正体」を目の当たりにした兵士達は、自分達の予感が的中していたことを呪い、絶叫と共に突撃銃を乱射する。だが、堅牢な彼女の鱗は銃弾など一切通さない。

「柳司郎様と私達に銃を向けたからには……あの村を焼いたからには。あなた方にも、相応の覚悟がおありなのでしょう? 逃げられるとは……思わないことです」
「ば、化け物があぁあぁあッ!」

 警察官時代の頃から柳司郎に深い愛情を寄せ、共に地獄に堕ちることも厭わず改造手術に志願した彼女は、蛇の怪人として猛威を振るう。

 敵対者に柳司郎との関係を悟らせないため、敢えて旧姓を名乗り。柳司郎が背負う深き業を、僅かでも肩代わりするために。
 怪人と化してでも己の愛に殉ずると決めた彼女は、行手を阻む兵士達目掛けて蛇頭状の髪先を無数の鞭のようにしならせ、矢継ぎ早に伸ばして行く。

 その髪先全てが獰猛な牙を剥き、兵士達の喉元に噛み付いた瞬間。牙から注入された猛毒が、兵士達の肉体を内側から殺し尽くして行くのだった。

「あ、がが、がぁあっ……!」
「……化け物で結構。それでも柳司郎様は、私を愛して下さった。故に私も……あの方への愛に殉じるのです。この人ならざる命が、絶え果てるその日まで」


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