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仮面ライダーAP
特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 第3話
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 ツジム村を焼き尽くした煉獄の炎。その災禍を起こした戦車隊は、闇夜に紛れて迫り来る地獄の軍団に何発もの砲弾を撃ち込んでいた。が、人ならざる怪物の群れはその悉くを紙一重でかわし、戦車隊に肉薄している。

「馬鹿な……! 奴ら、我々の砲撃から生き延びていたとでも言うのかッ!?」
「ええい、撃てッ! 今度こそあの化け物共を、地獄の底に送り返してやれェッ!」

 徳川清山の科学力が生み出した怪人といえど、戦車砲の直撃を受ければタダでは済まない。彼らがツジム村もろとも滅されることがなかったのは、その直前に村を離れていたからに過ぎない。

 ――無辜の民間人を戦いに巻き込むわけにはいかない。
 それは人の身を捨てた今でも残されていた、一欠片の良心だったのだろう。その一欠片こそが、彼らの運命を変えていたのだ。

 そして、今。炎の海を目の当たりにした始祖怪人達は、最後の一欠片すらも捨て去り――人の体も心も持たぬ、羅刹と成り果てていた。
 生身の人間故に、異形を恐れ。その恐れ故に、蛮行を犯す。そんな人間の醜さの極致を目の当たりにした彼らは、確信を深めてしまったのだ。

 弱き人間の心では、力では。何一つ、守れはしない。この世界はどこまで行っても、力だけが全てなのだと。

「……生身の人間達ですら、人の心などとうに捨てているというのに。生身を持たぬ我々が、後生大事にそれを持っているのも可笑しな話……か」

 戦車隊に高速で迫る、異形の怪人達。その最後尾で同胞達を指揮していた野戦服姿の老兵――山城一(やましろはじめ)ことエインヘリアルは、赤く発光している鋭利な双眸で戦局を静かに見据えていた。

 生身の人間とさして変わらぬ外観を持つ彼だが、その「内部」に秘められた人工筋肉と強靭な外装甲は凶悪な怪人そのものであり――隠し切れない「怪物」としての正体が、ブレード状に変形した両手の小指に現れている。
 変身機能を伴わない常時怪人型である彼のボディは実験的に試作されたものであり、後年の改造技術の礎となった、「アーキタイプ」としての側面が強い。

 1945年に終結した、太平洋戦争の末期。当時の神風特別攻撃隊を指揮していた海軍将校だった彼は、時代に翻弄された多くの若者達に「特攻」を命じ、死に追いやってきた。
 その「報い」を受ける間も無く戦争が終わり、死に場所を求めて改造人間の傭兵(サイボーグ・マーセナリー)と化した彼は――国防軍の所業に、「人間」としての「最期の怒り」を燃やしている。

「……橋部(はしべ)、ソコロフ」?

 彼は最前線を疾走している2人の部下に対し、最後尾から静かに「報復」を命じていた。
 その指示に深く頷いた2人の怪人は、己の「異能」を戦車隊に向けて行使しようとしている。車内からその気配を察してい
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