第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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にしたほうがいい。そのままだと出血多量で死ぬぞ。……復讐もまずは知っていることを喋らせてからにしろ」
「っ……くそっ! 逃げるなよっ! 貴様には聞きたいことがあるからな!」
「……すまんが俺は帰らせてもらう」
「なっ……待てっ! 逃げるな貴様っ! せめて名前を言えっ!」
目には見えないが、気配が遠ざかっていくのを感じ、アニエスが声を張り上げるが、
「後ろのはいいのか?」
「ちっ……くそっ!」
謎の人物の忠告に、アニエスが悔しげに舌打ちをすると、悲鳴が弱々しくなっていくリッシュモンに
向け駆け出していった。
謎の人物の気配が完全に消えたことにアニエスは気付いたが、追いかけることはしなかった。ただ苛立たしげな目で、足元に転がる縛られたリッシュモンを見下ろす。弱々しいが呼吸はある。血を止めるための道具等がなかったが、殺せない代わりにせめてもの仕返しと治療をと火を押し付けて止血したのだ。
「……あいつは一体」
止血にも利用した、破壊された杖を燃やした松明で辺りを照らしていると、
「これは……」
壁に深々と突き刺さる奇妙な剣を見付けた。
慎重に引き抜くと、それは見たことも無い剣だった。
柄は短く、それに反して刀身は長い。
見たところ大した業物ではないように思える。軽く振ってみるが、どうにもしっくりと来ない。刀身のバランスが悪いのか、それとも他に要因があるのか、理由はわからない。
燃える松明を床に下ろすと、アニエスは無言で壁に向け謎の剣を構える。
「フッ!」
息を吐くと同時に突きを放つ。
ザキッ! という鈍い音と共に剣が壁に刺さるが、刀身の半分どころか精々五、六サント程度だ。
「どういう事だ……」
これが迫る火球を破壊し、更にリッシュモンの腕を吹き飛ばしたものであるのは間違いない。
しかし、どうやって?
これを見付けた時、八〇〜九〇サントはある刀身が全て壁に埋まっていた。
先程、全力を持って壁に突き立てたというのに、十分の一以下の五、六サント程度しか埋まらなかったのに。
どうやったのか……?
魔法か?
しかしそんな魔法見たことはおろか聞いたこともない。
それにこれは見たところ唯の剣だ。
魔法を使ったとしてもこのようになるとは思えない。
それにあの殺気……
復讐に燃え上がっていた思考を一気に冷却させる程の殺気。
「……何者なんだ」
アニエスが持つ奇妙な剣が、アニエスの感情を現すかのように細かく震えた……。
狐狩りから三日後。
『魅惑の妖精』亭の二階にある一室の中、士郎は身体を小さくしていた。
「シロウさんには本当にお世話になって
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