第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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とか……となるとこいつがここにいる理由は。
「私怨……というわけか」
「そうだ、貴様に無実の罪を着せられ、殺されていった我が故郷の復讐だ」
二十年前、アングル地方の一つの村が国家に対する反乱の疑いで滅ぼされた。それを立件したのがリッシュモンである。国家に対する反乱、しかしその真実はロマリアの異端諮問『新教徒狩り』であった。
それをロマリアの宗教庁から見返りを受けることで、リッシュモンは真実を握りつぶしたのだ。
「そうかそうか、そういうわけか……」
「貴様は……貴様という奴は」
アニエスとすれ違う際等に時に向けられた暗い視線を不快に思っていたが、その理由がやっと分かりリッシュモンが納得するように頷く。その悪びれもしない姿に、アニエスが唇を噛み締める。噛み締めた口の端から赤い血が流れ地面に落ちた。
「罪なき民から搾り取った金に、貴様は何も思わないのか……っ!」
「何を思うだと? 平民が死ぬことに何を思えと? 貴様は肉を食う際、一々殺された家畜のことを考えるのか?」
「きっ貴様ああああアアアァァァァッ!!!」
可笑しそうに笑うリッシュモンに、アニエスの頭に一気に血が昇った。叫び声を上げながらアニエスは、リッシュモンに突きつけていた銃を投げ捨てると、剣を抜き放ち襲いかかる。
それを冷静に見ていたリッシュモンは、焦ることなく呪文を解放した。
杖の先に生まれた巨大な火球が、唸りを上げてアニエスに向かっていく。
「死ね」
アニエスは向かってくる火球を、事前に水袋を仕込んでいたマントで受けようとマントに翻そうとしたが、
「っ?!」
後方から凄まじい殺気を浴び、アニエスの身体が凍る。
立ち止まったアニエスの横を、音を切り裂きながら何かが通り過ぎ、
「は?」
アニエスに当たる寸前の火球を破壊し、リッシュモンの腕を杖ごと破壊した。
「ッッッギャアアぁアアああアアあアッ?!!」
飛来した何かに腕どころか肩を大きく抉り取られたリッシュモンは、腕を吹き飛ばされた勢いで地面に転がる。杖が破壊され、辺りが闇に沈む。闇の中、音を立てて血が吹き出す肩を残った手で押さえ込みながら、リッシュモンは地面を転がり回り悲鳴を上げている。
「な、何が」
突然視界が闇に染まり、闇の向こうからリッシュモンの悲鳴が聞こえる。あまりの状況の変化にアニエスが戸惑っていると、真後ろから声をかけられた。
「そいつの持つ情報は重要だ。殺さず捕らえたほうがいい」
「っ誰だっ!?」
振り返るが、そこには闇が広がるだけで何も見えない。アニエスは憎い敵の悲鳴を背中に、正体不明の声の主に向けて剣を構える。
「何者だっ!?」
「……敵ではない。俺のことよりも後ろのそれを気
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