第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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つリッシュモンの部下も動けない。その隙にアンリエッタが手を横に振るう。
「狐の爪と牙を取り除きなさい」
その瞬間、ドドドドンッ! という何十丁もの銃が一斉に発射された音が響き、黒煙が辺りに立ち込み火薬の嫌な臭いが広がった。立ち込める黒煙に視界を潰されたリッシュモンが、痛む頬を抑えながら立ち上がる。頬を抑えながら、残ったもう一方の手を水を掻くように動かし始める。段々と視界が戻ってくると、
「なっ、馬鹿な……」
目に映る光景にわなわなと震える言葉が漏れた。
そこには二つのものが映っていた。
一つは舞台上で全身から血を吹き出し倒れ伏す部下の姿。
もう一つは部下たちに向け拳銃を向ける客の姿。
否、客ではない。その正体は客に扮した銃士隊の隊員たちだった。リッシュモンが部下に舞台の俳優をさせていたように、アンリエッタも同じように部下に劇場の客に化けさせていたのだ。化けさせた部下は最近作り上げた銃士隊……若い平民の女性で構成された部隊。平民を見下すリッシュモンがそんな部隊の隊員を覚えているわけがなく、そこまで計算してアンリエッタは銃士隊を配置させたのだ。
憎々しげに睨みつけてくるリッシュモンに、アンリエッタは凍えるような冷たい視線を向け、
「さあ、行きましょうか……もちろんアルビオンではなく牢に、ですが」
酷薄な笑みを浮かべた。
「はっ、ハハハハハハハハハッ!!」
「…………何が可笑しいのですか」
唐突に笑い始めたリッシュモンに対し、アンリエッタは目を細め警戒する。無数の銃口や剣先を向けられながらも、笑いながらリッシュモンがゆっくりとした仕草で舞台上に上がっていく。
「止まりな――」
「ハハ八ハハハハッハハハ…………陛下……以前あなたは私にアルビオンに攻め入る理由を不意をうたれる前に討つためとおっしゃいましたが、それは真実ではございませんね」
「な、何を」
アンリエッタの制止の声をリッシュモンが遮る。アンリエッタが戸惑う隙に、リッシュモンが舞台上に上がってしまう。舞台に上がったリッシュモンを銃士隊が取り囲む。アンリエッタが何かを命じるか、リッシュモンが怪しい動きを一つでもすれば一瞬でリッシュモンを殺せるだろう。
リッシュモンの言葉にアンリエッタの身体がビクリと震える。リッシュモンはニヤついた笑みで舞台上から客席にいるアンリエッタを見下ろす。
「あなたはただ敵を打ちたいだけだっ! 恋人を殺された怒りを、憎しみを払うために、そのためだけに攻め入るのでしょう。ハハ八ハハハハッハッ!! なんと哀れなトリステイン! たった一人の女の復讐のためだけに必要のない戦争をさせられるとはっ!! ハハッハハハッハハ……なんと馬鹿らしい」
「黙りなさいっ!!
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