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剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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ように歩くと、両腕を広げてアンリエッタに向き直った。

「どうしようもありません。外には既に魔法衛士隊が包囲しております。下手な強がりは見せず潔く杖を置きなさい」
「……誰にものを言っている」
「なんですって?」
「誰にものを言っているのかわかっているのか小娘ッ!」
「な、何を――」

 穏やかな笑みから一変させ、怒気に顔を染めたリッシュモンは、杖をアンリエッタに突きつける。態度を急変させたリッシュモンは動揺するアンリエッタに対し見下した視線を向け声を張り上げた。  

「この程度で私を捕まえたと思っているのかっ!」

 リッシュモンの声と共に、背後の舞台で芝居を演じていた男女六名の役者たちが上着の裾やズボンをから杖を引き抜く。そしてリッシュモンと同じようにアンリエッタに向け杖を突きつけた。
 周りに座る客たちは、急な殺気渦巻く状況に騒ぎ出す。

「静かにしろっ! 死にたくなければ黙って見ていろっ!!」

 リッシュモンが血走った目でぐるりと客席を睨みつけると、立ち上がり叫び声を上げていた客たちが腰を抜かしたように座り込んだ。荒々しい呼吸の音だけが劇場に満ちる。

「護衛をつれず一人でここに来るとは、まさかここまで来て私を信じていたのですか? それともただの馬鹿だったのですかな」

 馬鹿にするような物言いに、しかし、アンリエッタは怒ることなく、先程のリッシュモンのように笑みを浮かべた。

「よかったですわ」
「なに?」
「実は落ち込んでいたんです」
「何を言っている」

 頬に手を当て小首を傾げながら溜め息をつくアンリエッタに、リッシュモンが苛立ち眉間に皺を寄せる。 
 
「これが我が国の役者の実力かと心配していたのですが、偽物だったのですね」
「……強がりもいいですが、そろそろ行きましょうか」

 杖を突きつけながらアンリエッタへと歩み寄るリッシュモン。

「アルビオンへ……ですか?」
「ええそうですとも、何あなたにとってもそんな話しではないはずですよ。どうせあなたのような無能な女が王などになっても苦しいだけでしょう。アルビオンでトリステインに対する人質となれば後は好きにしたらいい」

 アンリエッタの身体を好色な視線で舐めまわすように見ると、いやらしく笑いかける。

「恋人が死んで寂しいのだろう。アルビオンまでの道のりは長い……私が慰めてやろうか」

 アンリエッタの腕を取ろうとリッシュモンが腕を伸ばし、

「結構です」
「なっ?! はぶっ!?」

 パンッ!! というカン高い音が響いた。
 リッシュモンの身体が椅子を倒しながら転がっていく。
 身体をずらしリッシュモンの腕を避けたアンリエッタがリッシュモンの頬を叩いたのだ。
 突然の出来事に、舞台上に立
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