暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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してきたが、アニエスの突然の豹変に目を丸くするアンリエッタに気付くと、真っ赤な顔でブルブルと身体を震わせながら元の位置に戻る。一度大きく息を吐いて気を切り替えたアニエスは、士郎たちに顔を向け顔を振った。

「英雄などではありません。そもそも私一人で捕まえたわけでは……」
「ああ、そう言えばそうでしたわね」
「どういうことです?」

 一人ではないと言うアニエスの言葉に、ルイズが疑問の声を上げると、アンリエッタが頬に手を当てルイズに顔を向け。

「それが、裏切り者を捕まえた際、手伝った者がいたということなのですが、それがどこの誰か分からないのです」
「手伝った者?」
「はい、裏切り者が私に向けて放った魔法を破壊し、更には裏切り者の腕を杖ごと吹き飛ばしたのです……正確に言えば、裏切り者を捕まえたのは私ではなく、その謎の人物ということになりますね」
「魔法を破壊って……一体どうやって」

 ルイズの疑問に応えるように、アニエスは店に入ってきた時から手に持っていた何かの包を解き始めた。中から出てきたのは、あの地下通路で手に入れた謎の剣。

「これです……これで魔法を破壊し、更には裏切り者の腕を吹き飛ばした」
「これって……剣?」
「そうです、剣……だと思います」
「思いますって、どういうこと?」

 床に取り出した剣を立てるアニエスにルイズが聞くと、アニエスは剣を持ち上げると、誰もいない空間に向けて剣を振り下ろした。剣の達人と言われるだけに、その動きは洗練され、鋭い風切り音を立てながら剣が振るわれる。

「見た目は唯の剣に見えますが、振ってみると剣だという確信が持てなくなります」
「何故?」
「一言で言うと、とても振りにくいのです。これで剣戟を行うことになれば、相当な剣の腕の持ち主でも不覚を取るほどには」
「……そんな剣がどうやって魔法を破壊し裏切り者の腕を落としたのよ」
「それがわからないからここに持ってきたのです」

 そう言ってアニエスはルイズとアンリエッタに挟まれる士郎に顔を向けた。アニエスに睨まれるように見つめられた士郎は、頬を指で何度か掻くと、苦笑い浮かべる。

「何か?」
「貴殿は遠い異国から来たと聞きました。私はこのような剣は見たことも聞いたこともありませんのが、あなたなら何か知っているかと思い持ってきたのだが……何か覚えは」
「……さて……どうかな」

 士郎が首を捻ると、ドアがノックされた。

「ごめんねシロちゃん。お客が増えてきて手が足りないのよ。ちょっと下に降りてきてくれないかしら?」

 ドアの向こうからスカロンの声が聞こえてきた。アンリエッタがアニエスに目配せすると、アニエスは無言で剣に布を巻き始める。ベッドから立ち上がったアンリエッタはルイズに一度軽くお礼を言う
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