第五章 トリスタニアの休日
第七話 狐狩り
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了解いたしました。し、しかし、その前に事情が聞きたいのですが。先程アニエス殿から陛下がここにいるとの報告を受けここに来たのですが、その、状況が未だもって全くつかめず」
「すみませんが時間がありません。説明は後ほど必ずしますので、今だけは黙ってわたくしの命令に従ってください」
ぞろぞろと魔法衛士隊が集まってくるのを見て、野次馬が増え出すのに気付いたアンリエッタが、士郎から受け取ったローブを深く被り顔を隠しながら真剣な目で隊長を説得すると、何か言おうとした口を閉じた隊長が重々しく頭を下げた。
「わかりました。それでは蟻の子一匹すら通さない完璧な包囲網を築き上げてみせます」
「頼りにしてます……それでは行きますわよ」
「御意」
隊長に小さな笑みを向けたアンリエッタは、次に横に跪くアニエスに声を掛けた。
アニエスは短く応えると、歩き出したアンリエッタの後ろにつく。
そんな二人に対し、ルイズが声を向ける。
「待って下さい姫さま。わたしもお供します」
「いえ、それは結構です。これはわたくしが着けねばならない決着ですので」
「それでも」
「ルイズ、これは命令です」
なおも食い下がろうとするルイズに、足を止めたアンリエッタ振り返ることなく諌めると、諦めたようにルイズは顔を俯かせた。
反論が起きないことを確認したアンリエッタは、劇場に向かって歩き出す。
劇場の入口の前まで来たアンリエッタは、後ろにいるアニエスに何か伝えると、アニエスはどこかに消え、アンリエッタは一人で劇場に消えていく。
残されたルイズと士郎であったが、唐突に士郎がルイズに声を掛けた。
「ルイズ、俺も少しここを離れる。すまないがここで待っていてくれないか」
「それでわたしが黙って待つと思うのシロウは?」
ニッコリと笑みを向けてくるルイズに士郎もニッコリと笑みを返す。
「……思わないが、そこを何とか」
「……後でわたしの命令を三つ聞いてくれたらね」
「一つ」
「三つ」
「二つ」
「三つ」
「二つ」
「四つ」
「……増えてないか」
「……どんどん増えるわよ。いつ」
「三つでお願いします」
「よろしい。……じゃあいいわよ。いってらっしゃい」
士郎に背を向けたルイズは、手を肩越しにひらひらと振りながら美味しそうな匂いを漂わせる屋体に向かって歩き出す。士郎はそんなルイズの後ろ姿を暫らく肩を落とした姿で見ていたが、やがて溜め息を一つつくとアニエスが向かって行った方角に向け歩き出した。
「はぁ……なんでさ……」
舞台の上で芝居が始まる中、もう一つの芝居の幕が客席で上がっていた。
題名はそう、『女王の狐狩り』とでもつけようか。
アンリエッタは艶然とした笑みを横に座る
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