第八十三部第四章 戦線崩壊その五十
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「それでもだ」
「国家元首が戦場に出ると」
「国政に支障が出る」
「このことでも問題ですね」
「どうしても」
「そのことを認識している、私の次の代はだ」
二代皇帝以降はというのだ。
「戦場に出てはならない」
「国家元首としてですね」
「帝都にあって政務に専念すべきですね」
「戦場に出て戦うよりも」
「そうすべきですね」
「政務に支障が出てはだ」
国家元首が戦場に出てというのだ。
「問題だ、そして国政は軍事だけでなくだ」
「戦場だけのことでもない」
「むしろ戦場はその一部ですね」
「その一部の為に全体をおろそかにしてはならない」
「その視点からもですね」
「国政を考えるべきだ」
何といってもというのだ。
「だからだ、私の後はだ」
「帝国を建国され」
「そして皇帝となられてですか」
「その後は」
「閣下はともかくとして」
「次の皇帝の方は」
「軍の最高司令官であるが」
この地位にあろうとも、というのだ。
「国政全体に専念し」
「国政を滞らさせない」
「決してですね」
「そうあるべきですか」
「戦場は軍人に任せ」
「そのうえで」
「そうすべきだ、そして私は敗れるつもりはないが」
それでもとだ、アッディーンは文官達にこうしたことも話した。
「若し国家元首が出て敗れるとな」
「その国の威信は落ちますね」
「それも相当に」
「そうなりますね」
「それだけで」
「ましてや戦死したり捕虜になるとな」
その場合はというと。
「その国はこれ以上ない危機に陥るな」
「左様ですね」
「普仏戦争ではフランス皇帝ナポレオン三世が捕虜になり終わりました」
「また土木の変では明は皇帝が捕虜となり存亡の危機を迎えました」
「そして若し戦死でもするとだ」
その時はというと。
「勝利を収めてもな」
「その国の動きは大きく制限されますね」
「それ以後そうなりますね」
「三十年戦争のスウェーデンの様に」
「グスタフ=アドルフ王は勝った」
リュッツェンの戦いにとだ、アッディーンは話した。
「しかしだ」
「それでもですね」
「以後スウェーデンはそれまでの勢いを失いました」
「そのことも見ますと」
「国家元首自らの出陣は」
「例え戦争に勝ててもだ」
それでもというのだ。
「リスクが常に付きまとう」
「戦死したり捕虜になればどうなるか」
「そして国政が滞る」
「そうしたリスクを考えますと」
「どうしてもですね」
「そうだ、だからだ」
それ故にというのだ。
「どうしてもな」
「閣下の後は」
「閣下が即位されてですか」
「次の皇帝の方からは」
「戦場に出てはならないですか」
「そのことを思う、それも強くな」
こう言うのだった。
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