敢闘編
第六十六話 トラーバッハ星域の戦い(後)
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帝国暦484年6月17日11:15
トラーバッハ星域近傍、銀河帝国軍、討伐艦隊、
旗艦ノイエンドルフ、
ラインハルト・フォン・ミューゼル
敵は我々とアントン分艦隊から攻撃を受けつつも後退を止める事はなかった。ベルタ分艦隊と対峙する敵も同じ様に後退しているという。
「敵の縦深陣に引き込まれている…そんな気がするのだが」
「そうだな、後退した敵の更に後方に敵の本隊が居ても不思議には思わん。ただ…」
「ただ?」
「戦意がないだけかも知れん」
「戦意がないだと?」
「考えてもみろミッターマイヤー、あの連中の後方に敵本隊が居たとする。であればあの連中はベルタ分艦隊と対峙している集団と合流しつつ退く、のが定石とは思わんか。その方がこちらを一網打尽に出来る。それぞれ後退したのではこちらの包囲に時間がかかるし、包囲網も不完全な物になる…そうではないか」
「確かにそうだな。だがロイエンタール、敵は最低でも七個艦隊を擁している。アムリッツァ防衛に三個艦隊程残して、四個艦隊をこちらの撃滅用の遊軍として運用してもおかしくはない。四個艦隊が奴らの後ろに控えているとすれば、包囲網が多少不完全だとしても艦隊運動で補える」
ミッターマイヤー中佐とロイエンタール中佐の暇をもて余した議論は聞いていて楽しかった。楽しいなどと戦闘中に不謹慎ではあると思うのだが、中々に敵の逃げ足が見事なのだ。同盟軍も中々やる。だが本当に同盟軍なのか?老朽艦など国内警備か囮にしか使えないだろうに……待てよ、囮?敵アムリッツァの同盟軍はまずアムリッツァを防衛する事に専念している筈だ。小戦力での通商破壊には意味がない、老朽艦を使ってまで囮を出すなど…こちらを縦深陣に引き込むのではなく戦意がないとすれば…
「ありがとう二人共。中々の議論…いや、意見具申だった」
「いえ、その様な事は…」
ミッターマイヤーが少し照れた様な顔していた。
「貴官等の進言を元に私が進言するが、構わないか」
「はい。手持ちぶさたの会話でしたのでそれは一向に」
「ありがとう。まあ、私も自信がある訳ではないのだが」
伯爵と参謀長に歩み寄る。間に合うか、時既に遅しとなるか…。
「参謀長」
「どうした大佐」
「現在対峙している敵に戦意はありません。敵の意図はノルデン艦隊が戦っている敵集団から我々及びアントン、ベルタ両分艦隊を引き離す事にあると思われます。時間稼ぎです」
「なぜそう思う」
俺はミッターマイヤー、ロイエンタール両者の会話にヒントを得た推測を話した。まず通商破壊では無いこと、そうであれば哨戒線に引っかかりそこで敵の意図は崩れていた事。
こちらを縦深陣に引摺り込む意図もない。縦深陣に引摺り込んでこちらを撃破するのであれば、更に後方に敵の本隊がいる事になるが、その本隊も哨戒線にかから
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