敢闘編
第六十六話 トラーバッハ星域の戦い(後)
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「はっ!…艦隊速度微速で後退、その後反転、ノルデン艦隊の救援に向かう!…閣下、ミューゼル大佐の推測通りだった場合ですが…」
「…どちらにせよ現時点では確かめようがない。今は戦闘に集中するとしよう」
「はっ!…針路固定後、各部署毎に半舷休息とせよ。二時間ずつだ」
参謀長の指示をロイエンタールがオペレータ達に伝える。しばらくすると伯爵と参謀長が休息に入るために艦橋を離れ、司令部で残るのは俺とミッターマイヤー、ロイエンタールの三人だけになった。
「いやはや、見事な推論ですな、小官もかくありたいものです。まさかフェザーンが出て来るとは」
「私も自信は無いのだ。だが…」
「いや、大佐の推測が正しいでしょう。事実は小説より奇なり、と申しますからな。それに…」
「それに?」
「フェザーンならやりかねないと皆が思っている事の方が大事でしょう。国内の貴族の方々を疑うより傷は少ない。違いますかな?」
「…確かに」
「大佐も休まれては如何です、二時間程なら我々二人で充分です。何かあればすぐにお呼びします」
「…そうか、済まないな。ではお言葉に甘えるとしようか」
6月17日11:35
銀河帝国軍、討伐艦隊、旗艦ノイエンドルフ、
ウォルフガング・ミッターマイヤー
艦橋を後にするミューゼル大佐を敬礼しつつ見送ると、ふう、とロイエンタールが息を吐いた。
「やはり、ただの寵姫の弟ではないな、あれは」
「そうだな、あそこまでの推測は誰も出来んだろう。俺達の会話をヒントにしたと言うが、どうやったらフェザーンが出て来るんだ?しかも理路整然としている。皆まさかとは思いつつも反論出来ない」
「スカートの下の儒子、金髪の嬬子か…何が儒子なものか、あれは虎だな」
「虎だと?」
「そう、有能な虎…いや、金髪の獅子だ。貴族の艦隊と不貞腐れては居れんぞ。この先面白くなりそうだ。そうは思わないか、ミッターマイヤー」
そう言うロイエンタールの色の違う両眼には興奮の色があった。まだワインは飲んでいない筈だが…確かに退屈はしなくて済みそうだ。
「確かにそうだが、それよりちゃんと生かしたままオーディンに連れて帰ってくれそうな指揮官と上官で良かったよ。エヴァを一人にする訳にもいかんしな。貴族の指揮官にしてはまとも、というのは本当のようだ」
「確かにな。参謀長や大佐に助けられているだけの門閥貴族、と思っていたが、そうでは無さそうだな」
「おいおい、卿だって貴族のはしくれだろう?」
「貴族としての格は天と地程の差があるさ。だからこそ珍しいんだ、分かるだろう?」
「まあな」
「この先どうなるか、見物だな」
「ノルデン艦隊と合流した後か?」
「いや、あの獅子殿の将来が、だ」
やれやれ、ロイエンタールに着いていくしか無さそうだな……。
6月19日
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