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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第六十六話 トラーバッハ星域の戦い(後)
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をしかけるのは難しい。となれば帝国内で何か起こればその裏にはフェザーンが…という事になります。帝国内で鎮圧出来る程度の内乱を起こし、戦費調達の為の国債の買い付けや星間輸送など経済的に帝国を助ける…無論建前上は帝国の自治領ですから、条件は帝国に有利な物になるでしょう。ですが長期的に見ればフェザーン資本をますます食い込ませ、帝国を経済面から支配する端緒を築く事が出来る…。ただ帝国に協力するのでは旨味がないでしょうから」
誰も反論する者は居なかった。第一、証拠がある話ではないし、反論しようにもその反論にすら証拠がないのだ。貴族達、というのも考えられない話ではない。だがその場合、ブラウンシュヴァイク、リッテンハイムの両巨頭が絡まずに進む話ではない。もし両巨頭が絡んでいたとしたら、我々やノルデン伯爵をスケープゴートにした事になるがその場合、軍を敵にまわしかねない。国内問題である以上そこまでの危険を両巨頭が犯す筈はない。となると両巨頭を絡めずに進める事になるが、となると知恵を借りるのは…やはりフェザーンという事になるだろう。
「…クロプシュトック氏はその餌食になったという事か。まさか…氏は既に死んでいるのではなかろうな。参謀長、アントンとベルタを呼び出せ。大佐の推測を聞かせた後、方針を決める」

 二分程経った後、遮音力場の中にアントン、ベルタ両名との映像通信が繋がった。

“閣下、どうかなさいましたか”

「うむ。ミューゼル大佐の話を聞いて欲しくてな。大佐、いいぞ」
俺が先程の推論を話し始めると、黙って話を聞く二人の顔が戸惑いから驚きへ、そして強ばっていくのが見てとれた。

“まさか、いや、有り得ない話じゃないな。どう思う、ベルタ”

“マッチポンプの為にフェザーンがそこまでやるとは…だがそれなら敵が一世代前の物もあるような老朽艦ばかりなのも説明がつくし…閣下はどうお考えなのです?”

「大佐の推論が正しければ我々の敵はノルデン艦隊が戦っている敵だけ、となる。卿等の敵が誰かに雇われた者達で、戦意がないのなら、クロプシュトック艦隊が撃破されたのが分かれば退いていくだろう。様子を見る。卿等は現状で固定、我々は再度反転しノルデン艦隊を援護する。ノルデン艦隊からは何の連絡もないのでな、勝っているとも思えんし、大言壮語した手前、援軍を頼みづらいのかもしれん…どうだろうか」

“敵に戦意がないとすればそれで宜しいかと。我々も無理する必要はありませんし”

“御意に沿います”

「ではアントン分艦隊は我々の転進を援護してくれ。ベルタ分艦隊は現位置で停止、後は監視に努めよ。その他の細かい点は二人に任せる」

“了解致しました”

“御意”

通信は切れた。これではっきりするだろう…。
「参謀長、聞いた通りだ。後の指示は任せる」

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