敢闘編
第六十六話 トラーバッハ星域の戦い(後)
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
少佐からも何も言ってきてはおりません。が、陽動としてこれから何か起こるのかもしれません。これはキルヒアイス少佐やフェルナー大尉の捜査に期待するしかありませんが…」
何故俺が残らなかったのだろう、と今となっては悔やまれた。考えたくもないが、もし姉上に何かあったらキルヒアイスは自分を責めるだろうし、俺もキルヒアイスを責めてしまうかもしれない。残っていたのが俺であれば姉上に何か起きても責めるのは自分だけで済む…。
「ですが一つ分かっている事があります。投書の主は侯爵夫人に仕える人間でした。フェザーンの息がかかっている人物です」
フェザーン、というミッターマイヤーの声が聞こえた。すぐに申し訳ありません、と彼は陳謝したが、驚きが隠せないのは皆も一緒だ。
「大佐、卿は宮廷の騒動やこの叛乱の裏にフェザーンがいる、と言うのかね」
「帝国軍が同盟の艦艇を運用する事はありませんし、同盟軍が死兵の様な冒険的運用をするとも思えません。アントン、ベルタ両分艦隊と対峙している艦艇は合わせて一万隻を越えます。アムリッツァから侵攻してきたとすればば主要航路の哨戒線にもかからずにここまで来る事は有り得ませんし、奪還軍の索敵範囲内にも姿を表さない筈がない。帝国内の哨戒線の配置を見ますと、イゼルローン方面は厚くフェザーン方面は皆無に等しい。フェザーン方面からであれば疑われることなくこの星域まで進出出来るでしょう。それに対峙している敵は同盟の艦艇ではありますが単座戦闘艇からの報告によりますと、艦体色は帝国艦艇の物と同じ塗装が施されております。たとえ商船の乗組員に見られたとしても、軍人ではない彼等に見分けはつかない。その様な擬装の施された多数の艦艇を整然と運用出来る能力があるのは、帝国、同盟でなければフェザーン…とはならないでしょうか」
「だがフェザーンには軍事力は……そうか、払い下げられた鹵獲艦艇か。だから古い艦ばかりなのだな」
「はい。払い下げられた鹵獲艦艇があれ程存在するのも驚きですが、運用する要員は同盟、帝国問わず退役軍人や宇宙海賊達など事欠きません。まともに戦わなくてもいい、となれば簡単に雇えるでしょう。大人数を雇用しなくても、その程度の艦隊運用なら無人艦制御で充分ですし老朽艦でもこなせます」
「しかし、何故フェザーンと思ったのだ?」
「彼等の立場を考えてみたのです。フェザーンが軍事情報を自己の利益の為に使っているのは今に始まった事ではありません。帝国、同盟を良いように戦わせそれによって両者の均衡保たせている節があります。しかし同盟の帝国侵攻を事前に知り得なかった事で、帝国政府からは疑念を抱かれています。だから帝国に有利な情報を流さねばならないが、同盟が磐石で付け入る隙がない、となれば、フェザーンが目を向けるのは帝国内だと思ったのです。同盟が帝国内で謀略
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ