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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第六十六話 トラーバッハ星域の戦い(後)
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ず侵攻してくる事はあり得ない。同盟軍の目的はまずアムリッツァ防衛にあるのであって、帝国本土奥深くまで侵攻するのが目的ではない。それは現在までの情勢が示している。もし同盟軍が動くとすれば先行するイゼルローン奪還軍の撃破に向かうのが常識的な選択であり、であれば現在対峙している同盟軍らしき艦隊は奪還軍に常に張り付き、アムリッツァの本隊にその行動を知らせると共に呼応して奪還軍を撃滅するであろう。
「ふむ。だが奪還軍と我々が分離したのを知って、こちらの行動を妨害しているのかもしれん。奪還軍は我々が合流してもアムリッツァの同盟軍より少ないのだ。我々の行動を邪魔すれば、同盟軍が先行している奪還軍を撃破する事はより容易になる、そうではないか」
参謀長の反論はもっともだ。だが一つ問題があるのだ。
「参謀長のご意見はご尤もです。ですがそれは眼前の敵が本当に同盟軍だった場合です」
「本当に同盟軍だった場合…だと?」
「はい。あれは同盟軍ではないと小官は考えます」
参謀長だけではなく、伯爵やミッターマイヤー、ロイエンタールも驚いた顔をしている。同盟軍ではないとすれば何なのか、と思うだろう。

 「大佐…同盟軍では無い、と信ずるにたるものがあるのだろう?言ってみたまえ」
伯爵が身を乗り出して来た。信じてもらえるかどうか分からない。証拠もない。だが…。
「今回の事の発端にあります」
「クロプシュトック氏の叛乱の事か?」
「はい。イゼルローン失陥に続きアムリッツァを奪われ帝国は揺れています。そこに皇帝陛下に長年反意を抱くクロプシュトック氏の叛乱…事情を知る者なら当然と考えてもおかしくない流れが出来ています。そして小官の姉でもあるグリューネワルト伯爵夫人を狙うかの様な動き…後者も事情を知る者ならそういう事があってもおかしくはない、と思うでしょう。どちらも事情を知る者…帝国政府および宮廷内を狙った動きです」
「ふむ」
「当然帝国の支配層は揺れます。ですがまずここで不可解な点が一つ出てきます。クロプシュトック氏は何の為に決起したのでしょう?考えられるのは同盟の侵攻につけこみ、畏れながら皇帝陛下を倒す…という事が考えられるでしょうが、クロプシュトック氏は何ら意思表示をしていないのです。現体制への叛乱であれば決起の声明を出すなどして同調者を募るのが常道です。ですがそれもなく叛乱者に仕立て上げられ単独で戦う羽目になっている。替え玉と思われる人間を立て、オーディンの封鎖網も煙に巻いた人物としてはあまりにもお粗末です」
「そうだな」

 伯爵の顔が強ばっていくのが分かる。参謀長やミッターマイヤー達の顔も同様だった。
「そしてベーネミュンデ侯爵夫人がグリューネワルト伯爵夫人を狙うという投書…おそらくこれは陽動に類する陰謀なのかも知れません。オーディンに残したキルヒアイス
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