第二章
[8]前話
「あなたどうして卵焼き好きなの?」
「そのことか」
「付き合ってる時からだけれど」
「それな、子供の時にな」
「子供の時?」
「ひい祖母ちゃんが作ってくれた卵焼きが美味かったんだよ」
夫は妻に話した。
「五歳の時な、それでな」
「その時からなの」
「好きなんだよ、それで祖母ちゃんもお袋もな」
自分のというのだ。
「卵焼き得意でな」
「美味しかったの」
「うちはお弁当にもよく入れてたし」
卵焼きをというのだ。
「朝もな」
「よくおかずに出ていたのね」
「だからなんだよ」
「そうなのね、子供の頃の思い出ね」
「ひい祖母ちゃんそしてな」
「お義祖母さんお義母さんが作ってくれた」
美鈴は自分から言った。
「そうした食べものだから」
「余計に好きなんだよ」
「そうなのね」
「ああ、だからこれからもな」
その卵焼きを見つつだ、順一は話した。
「卵焼き食いたいな」
「そうなのね」
「だから作ってくれるか?」
「いいわよ、ただね」
「やっぱり最近卵高いよな」
「そのことが気になるわ」
「そうだよな、早く元の値段に戻って欲しいよ」
夫は心から言った。
「こんな美味いものが食えなくなったらな」
「嫌よね」
「ああ、本当にな」
こう話してだった。
順一は今は卵焼きを食べた、そうして笑顔になった。子供の頃から食べているそれは今も美味かった。
思い出の卵焼き 完
2023・4・20
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