β天国
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んでしょうね」
背後から聞こえてきた懐かしい声にふりかえる。そこにはウェンディの育ての親であり、ヴァッサボーネと一緒に俺を育ててくれたグランディーネの姿があった。
「向こうにいる人たちもみんなあなたの中にいる人たちよ」
「お前は優しい子だ。だからここまで強くなれた。そうだろ?」
記憶にある懐かしい人たちが次々に視界に入り収まったはずの涙がまた吹き出してくる。そんな俺の涙を拭いながら、お母さんは抱き締めてくれた。
「さぁ、あなたはあなたのいるべきところに帰りなさい」
「でも・・・あの幽霊には攻撃が当たらないんだよ・・・それじゃあ勝つなんて・・・」
「何を言っている、シリル」
お母さんの胸の中で泣いている俺の頭を指先でポンポンと叩くヴァッサボーネ。そんな彼の方を見上げると、その表情は笑っていた。
「今はお前も幽霊みたいなもんじゃないか」
「!!」
それを聞いて驚いた後、すぐに笑ってしまった。二人はいつも困った時に助けてくれて、こうやってアドバイスをくれるんだ。
「本当だ、気づかなかった」
死にかけているおかげで逆に突破口が見えたことが面白くて仕方がない。俺は涙を拭うと、三人の顔を見る。
「元の世界に戻ったら、ここでの記憶は全て無くなる」
「無意識下の世界だから、それは仕方がないことよ」
「でも、忘れないで。あなたの心の中で、私たちは生き続けているわ」
せっかく涙が収まったのに、そんなことを言われたらまた堪えきれなくなってしまう。でも、俺は懸命にそれを抑えると、三人に頭を下げる。
「ありがとう、お母さん、ヴァッサボーネ、グランディーネ」
頭を上げ、そのまま彼らに背を向ける。すると意識がゆっくりと薄れていくのがわかった。
「俺はまだ生きていく!!」
「シリル〜!!起きてよ〜!!」
聞こえてくる仲間の声で目が覚める。その俺の背中に何かが当たる感触がしたため、すぐさまそこから退避し身体を返す。
「俺の魂を喰うんじゃねぇよ!!」
「なっ・・・」
その正体は先ほどの幽霊。その彼の顎に拳を叩き込むと、声をかけていた仲間の方へと視線を向ける。するとそこには白目を向いている俺を懸命に揺すっている彼女の姿があった。
「何これ!?俺がもう一人!?」
何がなんだかわからず大慌ての俺。しかしそれは俺だけではなかったようで・・・
「これは・・・思念体!?」
幽霊もこれに驚いており、そんなことを口走った。その単語が記憶にあった俺はすぐに行動に移る。
「思念体ってことは俺の意志で身体に戻れるはず!!いや!!でもその前に・・・」
天狼島でマスターの思念体と戦ったことがあったため
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