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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第87話 アトラハシーズ星系会戦 その3
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視線を浴びせられるが、こっちもそれなりに忙しい仕事なので勘弁してほしい。

 現時点での第四四高速機動集団の戦力は補給・後方支援艦を除いて二〇〇〇隻を切っている。特に旗艦第一部隊は残存戦闘可能艦艇が五〇二隻。開戦前が七三三隻だから、戦闘不能艦艇四二隻を含めたとしても損耗率は二五.八パーセント。特に初っ端に狙われた戦艦の被害は大きく、戦える船は僅かに六四隻。開戦前が一〇六隻。航行可能な三隻を含めたとしても損耗率三六.七パーセントにもなる。

 ただし第二・第三部隊にはほとんど被害は出ていない。確かに均せば損耗率は一〇.七パーセントになる。メルカッツとまともに真正面から戦ったとしたら、増援に挟撃されて被害はこれでは済まなかった、かもしれない。それでも最低二万二〇〇〇人以上の命が失われたわけだ。その中には恐らく俺の知っている同期もいるだろう。戦闘の興奮からの一息、ようやく俺の背中に重いモノが感じられてくる。

「命に値する出兵の理由か」

 迎撃戦、というのはわかる。ヤンが攻めなければいいと言うイゼルローン攻略というのも、恒久的侵略策源地の奪取という意味もある。そして物事には順序があり、星系の小さな星の取り合いにも意味があるのも分かっている、つもりだ。
 シトレ・ロボス体制になってから、数度イゼルローン攻略戦が企図された。これは両者の手腕によって周辺星域の制圧が上手くいったからだと思う。しかし彼らが指導的立場に立つまでに流された血は、膨大であっただろう。
 それは結局、俺にしても同じことだ。とにかく帝国領侵攻を阻止する為に、七九六年八月前までにそれなりの地位につく為には、同じように膨大な味方の血を流さなければならない可能性が極めて高い。敵の血もまた同様だ。仮に命の消費に慣れたとしても、決して数字ではないと忘れてはならないだろう。

「ペニンシュラさんと二人でディナーをしたいな」

 本来なら双方の国家経済力を賭けたチキンレースなど止めて、とっとと平和条約を結んで講和しろと一〇〇〇年前の地球の日本に暮らしていた俺は思わんでもない。だが、双方の国家存立の面子と、過去一五〇年に累積された損害に対する報復心が、それを許すとは到底思えない。

 それを覆す方法は二つ。どちらかが圧倒的な力によってもう一方を制圧するか、『同盟がそれなりの戦力を維持しつつ』虚空の美女を口説き落としたタイミングで講和条約を帝国に提示するしかない。

 軍が講和の為の条件を作り上げ、政治家がそれを行使し、帝国に同盟の存在を容認させる。利権政治家でありながら、一応は危機的な状況下とはいえ自力でそこまでたどり着いたアイランズと、『イゼルローン陥落後』についていろいろ話をしておくのは悪い話ではないだろう。それでシトレが気を悪くするのは承知の上だが。

「ボロディン少
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