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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第87話 アトラハシーズ星系会戦 その3
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早に説明してくれた。
「艦を捨てても責任を問わないと言って頂いたことで、自爆させる艦の乗組員を説得できました。十分すぎる酸素と燃料を供給していただいたことで、喪失予定艦一六隻の乗組員一九八七名が四隻に分乗しても快適に過ごせました」
 ようやく解放してくれた手で、中佐は小さく後頭部を掻きながら、満面の笑みを浮かべている。
「作業としては楽な仕事ではありませんでしたが、事前に少佐から伺っていた予想を上回るような事態がなくて気は楽でした。よその参謀に同じことを命じられていれば、第八七〇九哨戒隊には少なからぬ被害は出ているでしょうし、おそらく合流は出来なかったでしょう」
「しかし、現時点で我々は三つの勢力に星系内で包囲されている段階ですが」
「それは別口の三〇〇〇隻の件ですな。どうかご安心を」
 トントンと右手人差し指でこめかみを叩くと、自分と俺を冷ややかな目で見つめるモンティージャ中佐を一瞥した後で、フィンク中佐は応えた。
「奴らの想定航路も我々は掴んでおります。八七〇九は一応偵察哨戒を職業としているつもりですぞ」

 果たしてフィンク中佐の説明は理路整然として、さらにはご都合主義もいいところだった。

 アスターテ防衛任務艦隊の増援は、捕虜の供述通りの時間に跳躍宙点を通過した後、メルカッツ率いる本隊と合流すべく移動を開始していたが、どうやらメルカッツ本隊からの連絡を受け一〇〇〇時に進路変更。一一〇〇時に第八七〇六哨戒隊が先に触接。いったんデコイの発振を停止した後で、一一三〇時に増援部隊の左後背に取りつくように移動して再び発振する。

 突如左後背に二四〇〇隻の出現を見た増援部隊は順次回頭し、無人艦とデコイを散々追い回し始めた。その間に乗員移乗を済ませた四隻はデコイの発振の影に隠れつつ早々に戦闘宙域を離脱。

 それから二時間後。俺達と同じように恒星スイングバイを利用した高速離脱に賭けた四隻は、一三〇〇時に所属不明の三〇〇〇隻と遭遇する。慎重に、あくまでもパッシブに徹して一時間追跡すると、ヴァンフリート星域への跳躍宙点からダゴン宙域への跳躍宙点への通常航路を巡航速度で一直線に向かっていることを確認。以降は光学連動で観測しつつ、恒星アトラハシーズに向かっていたところで、第四四高速機動集団本隊を索敵範囲内に捕らえたということ。

「我々が把握した三〇〇〇隻の集団は、予定通りであれば現在右舷より本隊正面を横断するよう移動していると思われます」

 メルカッツ本隊の逃走進路と増援の一八〇〇隻が合流を最優先したとすると、推定で二二〇〇時に我々の右舷後方で合流すると思われる。巡航速度での時間的距離は六時間。当然その間にもイゼルローンからの部隊も進んでいるが、大胆に哨戒機を飛ばさない限り、我々を視界に収めることは出来ない。

「敵が哨戒
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