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第十三話 母親その六

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「選んでから」
「そやろな、わいかて天の龍って言われてな」 
 空汰は嵐にも言われて話した。
「それで自覚してきたしな」
「人間の世界を護らなければいけないとね」
「嬢ちゃんもやな」
「それまでは巫女としてしか」
 まさにというのだ。
「思うことはなかったわ」
「お伊勢さんのやな」
「その前は何もなかったし」
 伊勢神宮に迎えられるまではとだ、嵐は言いながら自分の物心ついた時の家族も家もなく餓えと渇きに苛まれていたことを思い出しつつ言った。
「巫女になってからも」
「そのお勤めだけをやな」
「考えて行って来たから」
 だからだというのだ。
「人間の世界を救うという考えはなかったわ」
「そやったな」
「全くね」
「私もでした」
 護刃も言ってきた。
「そうした考えはです」
「なかったか」
「はい、ただ犬鬼と一緒にいて」
 神威に彼を見つつ話した。
「皆どうしてこの子が見えないのか」
「そのことか」
「いつも考えていて嘘吐きとも言われて」
 犬鬼が見えない者達からというのだ。
「辛かったですが」
「人間の世界を救うとはか」
「この前なんですよ」 
 少し目を見開かせて神威に話した、右手の人差し指を顔の高さでその横にやって立たせて話している。
「天の龍だって言われて」
「それからか」
「最初お役目を言われて」
 天の龍のそれをというのだ。
「私なんかがそんな大役務まるのかって思いまして」
「驚いたか」
「はい、困りましたが」
 それでもというのだ。
「私でもやれるだけやろうと決意しまして」
「そうしてか」
「今こうしてです」
「天の龍としているか」
「はい」
 神威にそうだと答えた。
「そうしています」
「そうなんだな」
「僕は風使いの血筋に生まれ修行に励んでいまして」
 征一狼は今も優しくかつ包容力のある笑顔で話した。
「皆さんより少し前にです」
「天の龍だと言われたか」
「そしてそれが僕の使命ならと受け入れまして」
 そうしてというのだ。
「さらに修行に励みまして」
「ここにいるか」
「そうなんですよ」
 神威にその笑顔で話した。
「僕の場合は」
「そうなのか」
「そうなんですよ」
「私は少し前に姫様の使者が来て告げられたのよ」
 火煉も神威に話してきた、大人の笑顔で。
「天の龍だって。私なんかでいいかしらと聞いても」
「それが運命とです」
「お答えしました」
 蒼氷と緋炎が言ってきた、今も丁の傍に控えていてそこには玳透もいる。
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