第百四十六話 クロイツェル伯爵夫人
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合わせたくない。
此処まで来ると、あの話を受けておけばと後悔してしまう。
『失礼ですが、エリザベート・ローザライン・フォン・クロイツェル様でございますか?』
『そうですが、貴方は?』
ごく普通の姿をした、ごく普通に目立たない男が話しかけてきた。
『はい、私はフェザーン商人のミハエル・ケレンスキーと申します。クロイツェル様にお言付けを頼まれました』
『私にフェザーン商人の知り合いは居ないけど』
身構えた私にケレンスキーと名乗った男は破顔しながら答えた。
『帝国では、リヒャルト皇太子の名誉回復が為されました。その為皇帝陛下が恩赦を行い嘗て、汚名を受けた、リヒャルト皇太子の寵臣の名誉回復も決定したのです』
『それが私に何の関係が』
ここで言質を取られても危険だと感じたわ。
『ご安心を、クロイツェル伯爵家も再興が許されました。その為にフェザーン弁務官事務所により、私がメッセンジャーボーイとして雇われた次第です』
今更帝国へ帰ることなんか出来ない、カリンも居るそれに私は既に同盟軍人として帝国人を同胞を殺す手伝いをしているのだから。
『ミスター、ケレンスキー、申し訳ないけど。それを受けるわけには行きません』
『それは又何故?』
『私の手は帝国人の血で汚れているのよ。今更帰ることなんか出来ません』
『その様な事は』
『帰って下さい!』
『判りました。しかしお気が変わったら、ご連絡下さい』
あの時、帰っていれば、カリンを一人にすることも無かったのに、人生って旨く行かないわね。
「お母さん!!」
あっ気を失って居たみたい、もう意識も朦朧としてきたわ。せめてカリンにワルターのことだけでも…。
「カリン、貴方のお父さんはワルター・フォン・シェーンコップと言ってローゼンリッターに居るわ。カリンご免ね、お母さんもう駄目かも」
「お母さん、そんな事言わないで、今直ぐシェーンコップを呼ぶから!」
「良いのよ、カリン、彼はハイネセンには居ないから」
「そんな…」
「カリン、幸せに成って、家の金庫にメモがあるわ、其処へ連絡しなさい。きっと幸せになれるわ…」
ああ、もう目が見えない、此が死なのかしら、カリンの鳴き声だけが響くわ…。
「お母さん!!!!!!!!!」
帝国暦485年1月10日
■銀河帝国 オーディン ノイエ・サンスーシ
お母さんが亡くなってから一週間が経って。お母さんのお葬式を終え、施設に入る前に自宅で少しだけ生活を許されていました。
施設の人は父親の話を聞いてきましたが、私はお母さんと私を捨てた男を父親とは認めたく無いから、知らないと嘘をつきました。
その後で、シェーンコップへ、お母さんが亡くなったという手紙だけを出して、私の住
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