第百四十六話 クロイツェル伯爵夫人
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宇宙暦793年 帝国暦484年8月12日
■自由惑星同盟首都星ハイネセン テルヌーゼン市同盟軍病院 エリザベート・ローザライン・フォン・クロイツェル
軍病院の一室である人物の人生が終焉を迎えようとしていた。
「お母さん!」
彼女は自分の命の炎が燃え尽きるのを感じながら、自分の手を握り泣き続ける娘を感じつつ、か細い声で娘に伝える。
「カリン、一人にしてご免ね。私がもう少し生きて行かれたら…」
「お母さん、嫌だよ、そんな事言わないで!」
泣き続ける娘の声を聞きながら、彼女の脳裏には自分の人生が走馬燈の様に走っていた。
『初めまして、皇太子殿下。お会いできて光栄でございます。エリザベート・ローザライン・フォン・クロイツェルと申します』
『此は可愛い、お嬢さんだね。私はリヒャルトだよ。幾つなのかな?』
『はい、4歳になりました』
『4歳なのに聡明な瞳をしている。将来が楽しみな令嬢だ。クロイツェル伯爵は良い令嬢を得て羨ましい限りだ』
あの時は、お父様とお母様がリヒャルト皇太子殿下に賞められて恐縮していたわ。あの頃が一番平和で幸せだった。あの事件が全てを壊した。
お父様が、叫んでいる。
『馬鹿な!皇太子殿下が皇帝陛下に叛逆を企てるなどあり得ん!これはクレメンツの陰謀だ!』
叫んでいたお父様が、皇太子様の無実を訴えるが逆に叛意有りとされ収監され、お母様と私は軟禁状態に置かれた。
それから僅かで、皇太子殿下は死を賜り、お父様達は死罪になり、私達は叛逆者として流刑星へと送られる事になった。しかし突然現れた人物が私達の人生を変えた。
『クロイツェル伯爵夫人と令嬢ですな』
『貴方は?』
『さる御方より命じられた者です』
その人物の手引きにより屋敷が炎上、その混乱に乗じて屋敷を脱出できた。その後密かにフェザーン経由で自由惑星同盟へと亡命した。
自由惑星同盟に来てから、お母様と二人で何とか生きてきたけど、学費に困り士官学校へと進学し任官した。
その後、無理が祟ったのか、お母様は亡くなられた。ワルターと出会ったのは、そんな時だった。
私が会った頃のワルターは軍専科学校の生徒だったわ。私は其処で事務をしていた、448生まれの7歳も年上をあの人はナンパしてきて、最初は袖にしていたけど、お母様を亡くし、意気消沈していた私を慰めてくれた。それで情にほだされて、彼に身を任せたんだったわ。
そしてこの子が出来たけど、あの人には他にも良い人がいたし、あの人の重みになりたくないから、自発的に身を引いてこの子を産み育ててきた。
この子には、父親の居ない生活を強いてしまい本当にすまないと思う。
このまま行けば、カリンはトラバース法により軍人になるしかない。こんな心優しい子をそんな目に
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