第十三話 塔の中の時その六
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「何しろ八百万や」
「神様の数はな」
「尚且つ増えていってる」
八百万からさらにというのだ。
「そやからな」
「あまりにも多くてな」
「それでな」
そのうえでというのだ。
「最初に誰が出て来てもな」
「不思議やないな」
「そや」
これがというのだ。
「もう予想がつかん」
「あまりにも多いと」
「いや、ほんまに多いわ」
中里は思い浮かぶ日本の神霊達の名前と姿から言った。
「無茶苦茶な」
「まさに八百万以上やな」
「我が国は何でも神様おるしな」
「野球のバッティングにもやな」
「めっちゃ性格悪かったけどな」
川上哲治である、邪悪の権化巨人の監督として悪名を極めている。
「ライバル蹴落としまくってな」
「長い間監督やって」
「選手はあくまでコマでな」
「自分だけの人やったな」
「軍隊でもな」
大戦中もというのだ。
「階級が上やとへらへらして」
「それでか」
「ちょっと下やとな」
「そこからはわかるわ」
シェリルは実に嫌そうに応えた。
「きつうあたったんやな」
「そやったらしい」
「そうした人やったか」
「それで部下や後輩をいじめてたらしい」
そのうちの一人に俳優として有名な丹波哲郎がいた、思えばこれもまた人間の奇妙な出会いというものだろうか。
「そんで回覧が回ったって話があった」
「あれやろ」
シェリルは中里の話を聞いて言った。
「戦闘になったら撃て」
「後ろからな」
「それで始末せえってやな」
「言われてたんや」
「ほんま性格悪かってんな」
「いや、まだある」
中里は顔を顰めさせたシェリルに話した。
「これがな」
「まだあるんか」
「戦争が終わって」
そうしてというのだ。
「いじめた人等に頭下げて回ったんや」
「謝りに行ったんか」
「あの時はそうするしかなかったってな」
そう言ってであったという、当然丹波哲郎のところにも行っている。
「謝って回ったんや」
「戦争が終わったら価値観も変わるわね」
アレンカールも憮然として言ってきた。
「そやから」
「そや、軍隊のこともな」
「評価が変わるわね」
「そのことがわかっててな」
川上哲治という人間はだ。
「軍隊での悪評を消してな」
「後生きやすくする為によね」
「謝って回ったんや」
「謝るとね」
「しかも昔のことでな」
「まあ誠意にはなるわね」
「それを見せたってな」
その様にというのだ。
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