暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第148話:異国の地にて
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
小なり胸を痛めた。

 取り分けクリスの顔は殊更に険しい。忌々しい物を見るような目で、目の前の光景を睨みフェンスを握り締めている。
 透はそんな彼女に近付くと、落ち着けと言う様に優しくそっと肩を抱きしめた。

「ッ、透……」

 弾かれるようにクリスが透を見ると、彼は澄んだ目で彼女を見てゆっくりと首を横に振った。それを見て、クリスも肩から力を抜く様に小さく息を吐くと小さく頷いて応えた。

「クリスちゃん? 透君? どうしたの?」

 2人の様子が気になった響がそっと声をかける。響もクリスの様子が何時もと少し違うと言う事に気付いたのだろう。だが2人の雰囲気からただ事ではない事が分かり、あまり踏み込むのもどうかと思いそっと声を掛けるだけに留めた。
 響の気遣いに、透は薄く笑みを浮かべながら小さく首を横に振った。透き通ったその笑みに、翼は詮索は野暮と考え口を閉ざした。

 そこに切歌と調がマリアの運転するジープで近付いてきた。今まで市街の巡回をしていた切歌は、奏達に見様見真似の敬礼をして巡回が終わった事を告げた。

「市街の巡回、完了デース!」
「乗って。本部に戻るわよ…………って、あら? 颯人は?」
「あれ? そう言えば……」
「あぁ、颯人なら……あっち」

 奏が指さした先では、颯人が子供達の前で手品を披露している姿が見えた。子供達が見ている前で手に何も持っていない事をアピールすると、何かを包むように両手を合わせる。その手の中に息をフッと吹きかけ開くと、何もなかった筈の手の中から色とりどりのお菓子が飛び出した。
 正に魔法のような光景は勿論、目の前に飛び出したお菓子に子供達は目を輝かせた。集まっていた子供達に颯人はお菓子を配っていく。

 いつでもどこでも人を笑顔にする事に余念がない彼の姿に、奏は笑みを浮かべながら呼び掛けた。

「お〜い、颯人〜! そろそろ行くぞ〜!」

 奏が呼ぶと、颯人は手を上げて応え子供達に別れを告げて離れていく。

 そんな彼の服の裾を1人の女の子が掴んだ。颯人は小さく笑みを浮かべると、しゃがんで目線を女の子に合わせ手を取るとハンカチを被せた。それを素早く取り除くと、何も持っていなかった女の子の手の中に小さな花が一輪握られていた。黄色いヒペリカム、花言葉は『きらめき』『悲しみは長く続かない』だ。
 勿論こんな小さな女の子が、花言葉なんていちいち知っている訳はない。だが颯人は、女の子を励ますつもりでこの花を送った。女の子の方は、何時の間にか手の中に一輪の花があった事に驚き目を輝かせている。

 颯人はそんな女の子の頭を優しく撫でると、今度こそその場を離れて奏達の所へとやってきた。

「悪い悪い、待たせちまったな」
「いいって。それより、あっちは?」
「ん〜、ま……
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ