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ソードアート・オンライン〜豪運を持つ男〜
ウェルカム トゥ アイングラッド
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SIDE Zin

 「あのチュートリアルから色々あったなー」

 俺は正面でただいま飯を食い終わり、ココアをすすっているキリトにそう問いかけた。
 キリトはこちらの問いに気づいたらしく、苦い顔をしながら『ああ。』とだけ返した。
 多分大方始まりの街に置いてきてしまったクライン達のことでも考えているのだろう。

 そう考えた俺は、キリトに
「何時までクヨクヨするんだ?迷っていてもしかたねぇだろ。」
 とだけ返した。後はこいつ次第だ、こいつはこんなとこで挫けてていいやつじゃねぇ。なんたって・・・・
 俺の中ではこいつ・・キリトは『英雄(ヒーロー)』だ。
 実際な話、あそこで助けてもらえなかったら俺は確実に死んでいた。
 
 どうやらキリトも多少は踏ん切りがついたらしく、こっちに向いてお礼を言ってきた。
「ほんとにいつもすまないな。」というので俺は笑って「お互い様。」とだけ返した。



 その後お互い顔を見合わせ、お互い吹き出した。しばらくすると、

「それにしても、ホントZinと逢えてよかったよ。」
 とキリトがいってくる。云ってて恥ずかしくないのかよ、その台詞。
 俺は「なんだ、藪から棒に。」とだけ返し、食器等を片付けだした。
 キリトはなおもこっちを向き、


「Zinはなにかと気にかけてくれるじゃねえか。
俺の中ではなんか『頼れる不器用な兄貴』って感じがするぜ。なんか兄貴がいたらこんな感じなのかなーとすら思うよ。」
 と言ってくれた。全くこちらとしては嬉しい限りである。だが不器用は余計だぞ!?キリトよ。

 と俺は心の中で呟きながら食器類を全部洗うと、いまだリビングにいて椅子に座っているキリトに
「お前も十分頼りになるよ。あの時だって助けてくれたじゃないか?」と返す。

 どうやらあの時のことを思い出したみたいで、すぐさま「いやいや!?俺のほうが十分助けてもらったじゃないか?」
 と言っている。
 
 俺はあのチュートリアルが終わったときの事を思い出していた・・・・・。

side out



 『……以上で|《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る』

  その言葉を最後に、ローブの巨人は消え、薄暗くなっていた空は夕暮れの赤さを取り戻し、いつの間にか消えていた楽団のNPCがどこからか再び現れ、BGMが聴こえてきた。

 そして―――


「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」

「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」

「こんなの困る!このあと約束があるのよ!」

「嫌ああ!帰して!帰してよおお!」


 悲鳴、怒号、絶叫、罵声、懇願、咆哮、そのすべてがこの中央広場を包んだ。
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