壱ノ巻
毒の粉
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あんたは、どうしてこんなところにいるの?」
「いや…若殿、って言っても瑠螺蔚さんは知らないだろうけど、柴田家の側室が今日天地城で若殿と朝餉をお食べになるんだ。時間的にはちょっと遅いけど。僕はその警護できたんだよ。…瑠螺蔚さん?」
「た、高彬。あんた、さっき、輿がどうとか、っていってたわね…」
「輿?送っていこうとした矢先に瑠螺蔚さんが切られそうになっているのが見えて、とりあえず僕以外の人は皆先に行かせて…瑠螺蔚さん?大丈夫?くちびる真っ青だよ。僕がそばにいる限り、もうあんな目にはあわせないから…」
「あんた、乗ってきたのは馬!?」
「え!?うん」
「いい、あたしが今から言うことを信じてね!」
あたしは言う時間ももどかしく、高彬の腕を引っ張って走り出した。
「馬は何処!?」
「こっちだ」
高彬も徒事ではないと察したのか、顔が真剣になる。
「その側室は発というのよね!?」
「しっているのか、瑠螺蔚さん」
「発は若殿を殺そうとしているのよ!」
「!」
「毒よ。多分酒にでも混ぜて飲ませるんだと思うわ。だからあんたは早く行ってそのことを知らせて!」
「わかった!」
馬のいるところに行き着くと、高彬はすぐに飛び乗った。あたしに手をさしだす。
「瑠螺蔚さん!」
「早く行って!あたしはいいわ」
高彬は周りを見渡して舌打ちする。
「だめだ!昌人たちがいない!残してはいけない!」
「行くのよ!あたしは大丈夫」
そういった途端、ぞろり、と正門から手に刀を持った男が出てくるのが見えた。
高彬もそれに気づく。
「早く!瑠螺蔚さん!」
「だめ!行って、早く!高彬っ!」
高彬が、あたしの手を捕らえた。そのまま強く引かれて、馬の上に引っ張りあげられる。
「僕に、掴まってて」
「駄目よ、下ろして!二人じゃ遅いわ、間に合わなくなってしまう」
「それでも!」
高彬が声を荒げた。
「それでも瑠螺蔚さんをここに残していくことはできないよ!」
あたしは息を呑んだ。
「あんた、自分で何いってんのかわかってんの」
若殿の命よりも、あたしの命の方が大事だと言ってしまっているも同じなのだ。
「バカじゃないの!」
高彬
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