壱ノ巻
毒の粉
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…。
……………。
ヤダーーーーーっ!まだ死にたくないーーーーっ!
「離しなさいよっ、このおっ!」
あたしはおもいっきし男の腕に噛み付いてやった。
あんぎゃああ、と男は情けない悲鳴を上げる。あたしはその隙に逃げ出した。
結局こうなるんだったら、迷わずあの袋捨てておけばよかったわよ!
屋敷の、かなり奥まで連れて来られたらしい。とにかく走る。
男がついてきたかと後ろをちらりと見て、あたしはすぐさま見たことを後悔した。
きらりと光るものが一瞬、見えた。それは間違いなく、刀。
「こンのアマぁ!」
ブン、と腕を振る音が聞こえた。あたしは咄嗟に頭を下げた。すれすれのところを、刀が滑る。髪がごっそりと切れて散った。
な、っ…なんなのよ、もう!
震える体を叱咤して走る。
ブゥン、ブンと音が鳴る。男がどうやら、手当たり次第に刀を振るっているらしい。あたしはそれを我武者羅によける。髪が切れ、肌が裂けた。腕が悪いくせに刀の切れ味がいいってどういうこと!?
やだ…!死んじゃうのかも…。
気がつけば、もうすぐ正門だった。運がいいことに、開いている。
急ごうとして、あたしの足が縺れた。しまったと思ったときにはもう遅い。あたしは走っている勢いのまま、大きく転倒していた。頬を地面でする。痛みはあんまり感じなかった。早く逃げなきゃと思うほど焦って、足が動かない。
不意に、髪の毛を鷲掴みにされた。頭の皮が剥ぎ取られるんじゃないかというくらい強く引かれて、仰向けにされる。
あんまり痛くて、涙が滲む。
「手間、かけさせやがって…。死んだら、可愛がってやるからなぁ」
視界の端で凶暴な光が滲んだ。それは果たして男のぎらぎらとした目か、刀か。
あたしは思わず目を瞑った。もう、だめー…。
「……っいさんっ!!」
いきなり髪を掴む手が外れた。いや、手は外れなかった。手が、男の体から、外れた。
ぶらん、とあたしの髪に下がっている、手。
「………………っ!」
喉の奥で凍って、悲鳴さえ出やしない。
男は情けなく絶叫しながら、無様にのた打ち回っている。
「ごめん。髪、切るよ」
誰かがそういって、頭が軽くなった。あたしはかくんと前にのめる。
た、助かった、の…?
いやでもまだわからない。
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