暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
壱ノ巻
毒の粉

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疑われたら困ると思って、懐刀(かいとう)なんて持ってきてないもの。持ってたとしても大刀にはリーチ的に敵わないし、それを補う速さなんてないし。



もし、今。あたしがこの粉を持って天地城に駆け込んだとする。でも当然柴田はしらばっくれるわよね。「この女は頭がおかしいのでしょう」とかって。あたしは孤児ってことになってるし、柴田家にきたのも誰にも言ってない。もみ消されて終わり。



それじゃあ意味がないわ。若殿に「発があなたのお命を狙っています」って言ったって、確たる証拠もないし、若殿があたしを信じてくれるかもわからない。侮辱された、って柴田家が前田に戦を仕掛けてくるかもしれない。



・・・・どうしよう。



とりあえず、この粉をどうにかしなきゃ。中身を入れ替えるとか…ああでもなにもかわりになるもの持ってないわ!



突然、ガタンと輿が揺れて、止まった。



あたしはさっと青くなった。…ついたんだ。まずい!



「侍女殿、つきましたぜ」



へへへ、と下品な笑い声と共に(すだれ)が上がる。



「あ、あの、私、ちょっと酔ってしまいましたの。申し訳ありませんが、すこぅし、待っていただけないでしょうか」



「いやぁ、それはいけないですぜ、侍女殿。休むにしても、渡すもん渡してからでなけりゃあ」



そういって、男はあたしの腕を掴むと、無理矢理輿の外に引きずり出した。



地面にひざをついたあたしを、これまたガラの悪そうな男が数人で取り囲む。



「侍女殿。こちらですぜ」



…逃げられない。



もう、行くしかない。あたしは腹をくくって、発のところまで、いった。



いつになく不機嫌そうな発に口上を述べる前に「袋は」と聞かれて、あたしはとまどった。



渡そうか、渡すまいか。



けれど縁には、あたしを引き連れてきた男がいる。中の様子を伺っている。だめだ。きっと今渡さなければ、あたしの身が危ない。



重ねて問われて、あたしは(ふところ)から守り袋を出した。



発の手に、それを乗せた。



ああ〜…。



「連れて行け」



発があたしを指差す。



は?と思ううちに、あたしはいつの間にか後ろから、羽交い絞めにされていた。



発がいた部屋から、出される。そのままずるずると引きずっていかれる。抵抗もしてみたが全く焼け石に水だ。



何!?あたしこれから、何処に連れて行かれるのよーっ!



まさかとは思うけど、このまま、殺されちゃったりとか、はは
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