暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その5
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ボンは返り血で真っ黒に染まり、軍靴まで濡らすほどであった。
 周囲には、偽装網のついた日本軍の鉄兜が転がり、
ボロボロにちぎれた上着に、両手をひろげ、力なく横たわるばかりであった。
 
「これで奴はお終いだ」
「あとは奴の死体を検分するだけよ」

 だんだんと近づいていくと、彼らは気が付いた。
遺体が着いている軍服の色と軍靴の形が違うことに。
「この服と軍靴は……日本兵のではない」
身に着けているものは、カーキ色の軍服に茶革の短靴だった。


 その違いは一目でわかるものだった。
PLOやPLFPの兵士が履いていたのは、フランス軍の軍靴に似たツーバックルの革ゲートルが付いた短靴。
 一方、マサキが履いている軍靴は、空挺半長靴とよばれる物。
空挺部隊でないマサキが持っていたのは、形を気に入った彼が私物で買い求めたものだった。
全体が艶がかった茶色の革で、米軍空挺部隊のコーコランジャンプブーツに近似したつくりである。

 また軍服も違った。
マサキが着ている軍服は、防暑一型とよばれる熱帯専用の戦闘服だった。
灰色がかった茶色の生地でオリーブ色に近い色合いだった。
シャツは開襟のボタン式で、通常の野戦服の様に真鍮のファスナーで開け閉めするつくりではなかった。
履いているズボンは、切り込みポケットがなく、大きいカーゴポケットがついていた。
また上着を中に入れるため、股上が深く、ダブダブとしたものだった。
1972年に、沖縄進駐の第一混成旅団のために制定された軍服だった。
(第一混成団は、今日の第15旅団)
それゆえか、兵士たちからは、「オキナワ」と呼ばれていた。

 PLOの戦闘員たちの軍服は、上下カーキ色で、日焼け防止のために生地はぶ厚かった。
上着は折り襟のシャツ型で、ズボンは細身のストレート型。
カーゴポケットはなく、ベルト通しのついたポケットがない簡素なものだった。

 KGB大佐の命を受けたPLFP兵士が56式自動歩槍に付けられたスパイク型銃剣で遺体を突っつく。
力いっぱい倒れた男の上半身を転がし、顔を確認する。
「これは……」
銃撃で殺されたのはマサキではなく、PFLPに参加した日本人の革命戦士(テロリスト)だった。

 その時である。
工作員たちに向かって、突然雷鳴のような音が鳴り響く。
彼らは、高速で飛び交う弾丸によってたちまち撃ち抜かれ、これまた面白いように死んでいった。

 逃げまどう工作員たちの背後から、忽然(こつぜん)と姿を現したマサキ。
左手で弾薬納を開けると、空になった30連射の弾倉を交換する。
すると、銃把を握る右の親指で、左側についたセレクターを安全(セーフティ)から連射(オート)に切り替える。 
 火を噴き、咆哮を上げるM16小銃を振り回しなが
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