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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission5 ムネモシュネ
(3) 自然工場アスコルド 第01栽培室(分史)
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、と言いながらユティはふにゃふにゃ笑っていた。その父のワガママさえ、ユティは愛しくてたまらないのだろう。

 ルドガーは顔も知らない両親に考えを巡らせた。
 ルドガーには親との思い出どころか知識さえ少ない。母の名がクラウディアで夭折したことは知っているが、父親に関しては顔も名も知らない。ユリウスに尋ねても教えてくれなかった。
 ユリウスと母親が違うという事実さえ、知ったのは列車テロの時、ヴェルの口からだった。あれは地味に効いた。

(別に寂しいとかじゃない。愛情なら兄さんから充分すぎるほど貰ってる。けどエルやユティみたいに、当たり前に親の話する子たちを見ると、何でそんなに一生懸命なんだって疑問に思う。俺にはその『いて当たり前の存在』がいないから、分からないんだ)

 なりゆきとはいえここ数週間はエルとユティと共同生活を送って、他の仲間よりは彼女たちに親近感を向けていたのに。急にルドガー一人が取り残された気持ちになった。


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