第五幕その八
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「けれどね」
「先生はなんだ」
「全くもてないから」
それでというのです。
「求めないよ」
「そう思ってるんだ」
「そうだよ、僕はもてないよ」
全くと言う先生でした。
「だから恋愛や結婚はないよ」
「無縁だね」
「それこそね」
「やれやれだよ、先生はもっと自信を持っていいよ」
「恋愛のことに?」
「もてると思うよ」
「それはないよ」
やっぱりこう言います。
「僕はね」
「そう思い込んでいるだけだよ」
鱒二はわかっていて言います、そしてです。
鱒二は先生にこう言いました。
「先が思いやられるけれどちょっとは周りを見てね」
「周りをなんだ」
「そうしたら気付くかもね」
先生もというのです、こうお話をしてです。
先生はオオサンショウウオのコーナーを隅から隅まで見てとても奇麗なことに笑顔になってでした。
日笠さんにこのことをお話します、その後で。
日笠さんは先生に必死のお顔で言ってきました。
「あの、お昼ですが」
「はい、そちらですね」
「予定はありますか?」
「大学の食堂でと考えています」
「それならです」
日笠さんは先生に申し出ました。
「お弁当を用意してきたので」
「お弁当ですか」
「はい、サンドイッチです」
こちらのお料理だというのです。
「作ってきましたので」
「ご一緒していいですか」
「お願いします」
必死のお顔で言うのでした。
「飲みものは紅茶です」
「いいですね、では」
「はい、こちらに」
動物園の中のベンチに座ってでした。
そうして一緒に食べます、先生よりも日笠さんの方が嬉しそうでした。サンドイッチは色々な種類があって量もかなりでした。
それで先生も満足しました、ですが。
その後で、です。先生は研究所に戻って文献を読みますが皆はその先生に言ってきました。
「ここで何もなし」
「いつも通りね」
「日笠さんだけが必死で」
「当の先生はこの通り」
「困ったことよ」
「何が困ったことかわからないけれど」
それでもと言う先生でした。
「日笠さんのお料理はいつもながら見事だね」
「だからね、先生」
ダブダブも今回ばかりはやれやれとなっています。
「そこで終わりって何なの?」
「お弁当一緒に食べて何も思わないの?」
ガブガブも言います。
「本当に」
「何でそこでいつも終わりなのかな」
チーチーも呆れ貌です。
「本当にね」
「源氏の君じゃななくてもね」
トートーは先程の鱒二とのお話から言います。
「もっとそちらの方も自覚したら?」
「ここまでわからない人って他にないというか」
「このこと限定で思い込み過ぎよ」
チープサイドの家族も言います。
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