第八十四話 ボヘニアのヂシュカ
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の忠実なる子羊である大司教を罵倒した罪で、この度浄化される事になった!」
異端審問官の言葉では、教皇の前に潜入する事には成功したが、直訴の甲斐なく捕えられた様だった。
(しかし罵倒とは、汚職の図星を突かれた腹いせに火あぶりにしようってのが、本音じゃないのか?)
ヂシュカは内心思ったが、実は大当たりでプラーカ大司教は要職である事を言い事に、汚職の限りを尽くしていた事をその場に居た教皇や枢機卿らに暴露した。
だがフシネス神父は誤算があった。
汚職をしていたのは大司教だけではなく、他の枢機卿までも汚職にからんでいて、多額の用途不明金がプラーカからロマリアへ送られていたのだ。
枢機卿らは教皇に知られる事を恐れ、またプラーカ大司教は意趣返しと度重なる警告を無視してジャガイモを栽培しているフシネス神父を口封じのために消す事で利害が一致し、裁判無しで処刑できる異端認定をする事で合意した。
哀れフシネス神父は捕えられると、いらない事を言われないように口を麻糸で縫い合わされ、今日まで冷たい地下牢に閉じ込められていた。
木の柱に括りつけられたフシネス神父を背に、異端審問官はフシネス神父への罪状を延べ、懐から杖を取り出すと火魔法を唱えて杖の先に火を灯した。
「始祖ブリミルよ、この異端者を御赦し下さい!」
異端審問官は、フシネス神父の周りにくべられた薪や書籍に杖の火をくべた。
『ああっ!』
市民達から悲鳴が上がる。
火は油まみれの薪や書籍は瞬く間に燃え広がって炎になり、炎は神父の姿を隠してしまった。
「良い人だったのに……」
「お可哀想に神父様」
ざわざわ……と、市民達に動揺が広がった。
「市民の皆さんも、間違った教えを吹聴する不届き者が居ましたら、お近くの教会に届け出て下さい!」
その間も異端審問官は自分達の正当性を声高らかに叫んだ。
燃え盛る炎を背に異端審問官の演説は続き、その無残な光景と見て耐えられなくなった市民が、一人二人とその場を去っていった。
そして、炎の中のフシネス神父は、一切悲鳴を上げず炎の中息絶えた。
フシネス神父が最後に何を思い息絶えたのか、それを知る者は誰も居ない。
燃え上がった炎は、濛々と黒煙を空に上がり、西に堕ちかかった太陽の光を遮った。
……
日は西に落ち、キャレル橋近くの広場の刑場の人は疎らになった。
異端審問官の姿は既に無く、十数人の教会関係者が刑場の後片付けをしていた。
その教会関係者は、灰になって原形を留めなくなったフシネス神父だったものをヴルダヴァ川に放り捨てた。
ヂシュカは、キャレル橋の見える酒場の二階に場所を移し、灰になったフシネス神父が川に捨てられる様を血涙を流しな
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